連鎖球菌菌血症でのフォローアップ血液培養の陽性率は3.2%だった (OFID, 2020)
菌血症で血液培養を繰り返し採取するとき
菌血症は内科でよく見る病態ですが、血液培養をフォローアップすべき臨床状況はどんなときでしょうか。
必要のない場合に血液培養をフォローすることは、偽陽性の問題や、患者さんに余計な採血侵襲を与えてしまうことに繋がります。(特に血液培養は2セット採取が基本なので2回、20mlの採血が必要。)
■血液培養の再検が適切な状況
(Cleveland Clinic Journal of Medicine February 2019, 86 (2) 89-92; DOI: https://doi.org/10.3949/ccjm.86a.18001)
・血管内感染(感染性心内膜炎、血栓性静脈炎など)が疑われるとき
・黄色ブドウ球菌の菌血症
・カンジダ菌血症
・(確定した感染性心内膜炎などで)治療反応を確かめるとき
・多剤耐性のGNRの菌血症
・発熱性好中球減少症
・持続or新規の感染 (例: 適切な抗菌薬治療後 72時間経過しても発熱や白血球増多その他の感染徴候が持続するとき)
-新規の敗血症疑い
-カテーテル関連血流感染症
-ソースコントロール不良疑うとき (膿瘍、関節感染、カテーテルを抜去していないとき)
-エントリー不明の菌血症: 菌血症が持続するならソースを探し続ける必要あり
■ルーチンでの血液培養フォローが不要なとき
・連鎖球菌菌血症
・非複雑性のGNR菌血症
・局在感染に伴う菌血症: 蜂窩織炎、市中肺炎、腎盂腎炎
菌血症が判明して適切な抗菌薬を投与しても発熱が持続するとき、72時間以内であっても、血液培養のフォローアップがよくオーダーされるが、そのような状況で血液培養を採取しても陽性になることはまれ。
■血液培養をフォローしないことで持続菌血症を見逃すか?
理論的にはありうるが、上記の懸念される状況(e.g. 黄色ブドウ球菌ならフォローする)を考慮していれば可能性は低い。さらに、持続菌血症であれば経過をみているうちに繰り返すことが必要な臨床経過となるはずだ。
■フォローアップするときの頻度
エビデンスに沿ったガイドラインは存在しない。
general ruleとしては最初の血液培養陽性後 48-72時間でフォロー
連鎖球菌菌血症での血液培養フォローでのフォローアップ血液培養の陽性率は3.2%だった
Open Forum Infect Dis. 2020 Nov 7;7(12):ofaa541. doi: 10.1093/ofid/ofaa541.
単施設研究
参加者
【組み入れ基準】
・18歳以上
・2013/1/1-2018/12/31に入院
・血液培養で連鎖球菌が陽性
【除外基準】
・複数菌が血液培養で陽性
・最初の血液培養採取から48時間以内に死亡
・最初の血液培養採取が外来施設で行われた
・血液培養のフォローアップをしていない
目的
・フォローアップした血液培養の陽性率を調べる
・また、持続菌血症のリスク因子を調べる
結果
連鎖球菌菌血症 n=590
18歳未満 58人, 入院しなかった症例 34人, 複数菌検出 89人, 48時間以内死亡 11人, 血液培養フォローしなかった人 84人を除外
組み入れたのは n=314人
そのうち、持続菌血症となったのは 10人 (3.2%)だった。
内訳は心内膜炎 5人, epidural absess 2人, 椎間板炎・化膿性椎体炎 3人、歯性感染症1人、エントリー不明1人、その他3人(複数を含むので合計は10をこえる)だった。
エントリー不明の連鎖球菌菌血症は全体で86人 (27.4%)だった。
Limitation
1セットだけ陽性を含んでいる。
臨床的にはコンタミネーションと判断していた人も含まれているかもしれず、フォローアップ血液培養の陰性率が高かったことは過大評価かもしれない。
私の臨床における解釈
連鎖球菌菌血症でルーチンの血液培養は不要ではあるものの、
感染性心内膜炎を疑うとき
化膿性椎間板炎や硬膜外膿瘍を疑うとき
は積極的にフォローアップを考える。
エントリー不明のとき、OFID 2020では86人の血液培養フォローのうち1人陽性となった。
割合としては多くないが、感染性心内膜炎など疑わないと診断できない症例が紛れており、現時点でエントリー不明で最終的に心内膜炎などソースが判明する菌血症と結果的にエントリー不明のままよくなった菌血症を治療している時点で区別するのが難しい、
ゆえにエントリー不明のときもフォローアップを考慮したい。