ニンジャズ・ポール・アンド・ライン・フィッシング
重金属酸性雨が降りしきるネオサイタマから遠く離れた地、オキナワ。吸血鬼には耐えられぬ強さの太陽光のもと、クルーズ船が海を割って進む。その船上ではヤマミ社長がオキナワ休暇を満喫していた。
そのクルーズ船から2000メートルはなれた海中より、隙を窺う存在あり。ニンジャである。名はトーピード。ヤマミ社長暗殺のためにソウカイ・シンジゲートから派遣された。彼は常人の三倍のニンジャ肺活量をもつ。そして近くの海洋生物を自在に操り魚雷めいて突進させる恐るべきギョライ・ジツの使い手である。
トーピードは海中からじっと機会をうかがう。彼は確実に殺せる機会をひたすら待つ。それが単なるモータル暗殺ミッションであってもだ。東の空で輝いていた太陽が西へ傾くころ、ついにその機会が訪れた。デッキの上でこちらに背を向け、のんきにハイクを読んでいるヤマミ社長めがけギョライ・ジツで近くを泳ぐバイオマグロを操り突進させた。
バイオマグロは一直線に進み、社長めがけ海から飛び出した。トーピードは成功を確信した。ヤマミ社長暗殺は発情期のバイオマグロによる不幸な事故として片づけられる。そして俺は昇進しソウカイシックスゲイツの一員となる!順風満帆の未来を想像しながらマグロギョライを見守るトーピード。
しかし社長のすぐそばまで接近したマグロギョライが突如破裂した!皆さんの中にニンジャ動体視力をお持ちの方はおられるだろうか。その方は目撃できたはずである。バイオマグロの体を貫通したスリケンの姿を!
サブマリンは狼狽しつつも二匹目のマグロギョライを放たんとす!しかし、それよりも早くトーピードの体がワイヤーアクションめいて吹っ飛んだ!否!めいてではない!トービードの体にはフックロープが食い込んでいる!
「グワーッ!?」フックロープに引っ張れられ宙を舞いながらトーピードが目にしたもの、それはヤシの木の先端にロープをひっかけ一心不乱にロープを引く赤黒い死神!
「グワーッ!」砂浜にたたきつけられたトーピードに死神はアイサツした。「ドーモ、はしめましてトーピード=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。トーピードです。貴様!何故俺の名を!?」「オヌシ達の計画は先刻お見通しだ」「何!?」「誰の口から洩れたかは、ジゴクに行って確かめるとよい。ニンジャ殺すべし」
陸上でネオサイタマの死神と戦っても勝ち目はない。だが、海中ならば俺の方に分がある!一刻も早く海に戻り安全圏からマグロギョライを撃ちまくるのだ!「ギョライ・ジツ!イヤーッ!」バイオマグロを突進させ自らは海へと急ぐ。その背後でニンジャスレイヤーは高速で回転しながらスリケンを投げ始めた。ヘルタツマキだ!
「イイイイイヤアアアーッ!」高速で放たれたスリケンは寸分たがわずマグロギョライをすべて撃墜!その後も放たれ続けるスリケンによりトーピードは両腕をケジメ!「グワーッ!」
ニンジャアドレナリンにより鈍化した時間でトーピードは状況判断する。陸では勝てない。マグロギョライはすべて撃墜された。バイオマグロはアウト・オブ・アモー。逃げられない!このままでは海に逃げ込む前に爆発四散する!…いや!まだだ!ヤバレカバレだ!一矢報いてやる!
「ギョライ・ジツ!イヤーッ!」ゴウランガ!トーピードが下した決断、それは自らを海洋生物とみなし自分自身をギョライ・ジツの対象とする決断である!トーピードの体は凄まじい速度で加速しニンジャスレイヤーへと向かう!
捨て身のセルフギョライ・ジツに対しニンジャスレイヤーは無慈悲なダブル・チョップで答えた。「イヤーッ!」まっすぐ突っ込んでくるニンジャギョライに対し両手のチョップを突き入れる!
ニンジャギョライと二つのチョップが正面からぶつかった。ニンジャスレイヤーの繰り出した包丁めいたチョップによりトーピードは三枚に下ろされた!ワザマエ!「アバーッ!サヨナラ!」トーピードは爆発四散した。水平線に沈みかけたオキナワの太陽は何も言わず、無慈悲な熱線を振りまくばかりだった。