私は『黄金のレガシー』のここが良くないと思った

こういうシナリオ作りを今後してほしくないな、と思ったので書く。

◯前提
私は『黄金のレガシー』の世界観と設定、話の大筋については非常に評価が高い。
なんなら歴代で一番好き。
正直、古代人とかデュミナスの話をしていた漆黒暁月よりも、エオルゼアの『今』を生きる異文化の旅は心が踊った。(竜と人の歴史を知る旅の蒼天も同じくらい好き)
それぞれの種族に求められる試練も、個性豊かで"テーマは"好き。(細かいシナリオは粗が多く感じた)
異種族の王位継承戦。土地の理解、人との絆。物語の大きなフックとしての黄金郷。

問題は、キャラクターと細かいシナリオが話の大枠を実現するための『辻褄合わせ』で作られていると感じてしまった点。
大筋に沿わせるために、シナリオは不自然な運び方をするし、キャラクターは意味のわからん行動をする。あらかじめ用意されたチェックポイントを消化するだけの物語。

私にとってそれは没入感をとても削ぐものであり、ちゃんと主張しておきたいので書く。

◯シナリオ
・トライヨラ到着後
『継承の儀』が開始するとき、ウクラマトの登場に興味なしの民衆に凄く違和感があった。
俺はてっきり、ウクラマトは実績こそ無いけれど、民には愛されているものだと思っていたんだけど。
なんか「期待されていない泡沫候補が成り上がる!」みたいなカタルシスを描きたいだけで、誠実な描写じゃないんじゃないかと思った。(実際はわからん)

・ペルペル族
交易により100万ギルを目指す話。
意図としては「相手を理解して、歩み寄った提示をすることでwin - win」みたいな話なのかな。
でも途中、バイトで茶葉を5束集めたら急に報酬が40万ギル分増えた。
いや、相手が繁忙期で労働力を求めている~なのはわかるけれど……。
値段設定、雑すぎませんか。
ここで茶葉13束集めたら100万ギル達成だったな!面倒な交易なんて最初からいらんかったんや!

・ハヌハヌ族
祭の中でウケブが「祭によってエーテルがケーツハリー像に流れ込み、地脈を活性化させる!」みたいなことを説明したとき「は?お前全部知ってるのに不作を傍観してたわけ?」と思いました。口だけオフォカリーかよ。

・モブリン族
なんか到着前、ラマチが船酔いで「俺は……弱い!!」みたいなことを言い出して「仲間っていいもんだな……!」な空気になった。
凄く大切なことだし、ラマチの成長物語として絶対に描きたいシーンだとは思うけれど(それこそ蒼天アルフィノの薪拾いとか)
いや、船酔いがトリガーかよ。ちなみにこれは批判ではなく、ただのツッコミ。

あと、連王から「娘を頼む」と言われた直後にラマチが誘拐されました。
連王が「子どもたちにはそれぞれ足りないところがあって、それを継承の儀で学んでほしい。冒険くんはラマチがそれを学ぶのを見守ってほしい。親として、頼む」と仰るシーン、めっちゃ好き。これは描くべき。
そしてバクージャジャの、王位継承のためならなりふり構わないという姿勢。それこそ証の強奪すら。このシーンもバクージャジャの描写として必要だと思う。
連続して起こっちゃったら、こんなに苦笑してしまうとは。これも批判ではなく、ただのツッコミ。

フォンジャンテーン周りの話は結構好きなので、モブリン族の話自体は好き。

・ヨカフイ族
ヨカフイ族、100点!
死生観をちゃんと語る、歴史を説明してくれる、黄金郷への足がかりをくれる。
ヴァリガルマンダ周りは後述する。キャラクター、バクージャジャの項。絶対に許さない。

・シュバラール族
ゴミカス試練。
「和解の歴史を象徴する料理を作ってほしい」は素晴らしいテーマ。
やっていることが本当に酷い。
コーナとタッグを組んだのも、その後にコーナがラマチに継承権を譲るための描写をしたかっただけで、そもそも2人ペアにする意味がない。
いや、無理くり言い訳は出来る。「この料理は対立する2つの部族の融和の証だから、対立する継承候補で手を組んでことを為してほしい」みたいな。
ああ、説得力あるね。実際の試練に「協力しないと出来ない」要素がないことを除けばね。
そして偶然そこにウケブがいたから解説をもらえただけ。
陰湿な試練。
選者「ぱくっ。ラマチ、これは確かになんちゃらピピル!ラマチの勝ち!!」
サレージャ「ふっふっふ、勝負はまだ終わってませんぞ……我々のを食べていただこう」
選者「ぱくっ。バナナの葉が無い!これはピピルに非ず!」
サレージャ「な、なんですとぉ!?」
私「料理勝負で思わせぶりな後攻が負けることってあるんだ」

あとさ。
選者「冒険者君。突然だけど、俺ラマチの本当の親父なんだ」
私「どうした急に」
選者「ごめん、聞かれてた。俺がラマチの親父ってバレた。人質にされたわ」
これなんだったの?
バクージャジャと戦って勝つみたいなシーンを入れたかったから、戦う動機付けで誘拐させただけだよね。
ラマチが平和と民を想う心でLB連発してバクージャジャを倒すイベント戦闘は好き。
イベント戦闘への導入が雑でむっとしただけ。

・マムージャ族
ゾラージャ周りに凄く不満があるのだけれど、それはキャラクター、ゾラージャの項で書く。

バクージャの母親「私たちの罪を話す。天深きセノーテに来て」
私「うん」
バク「そこにいたのは俺です」
バク母「いつもここで泣いてるね」
私(露骨な"バクージャがいること"の理由付け台詞だ)
バク「当事者である俺が話そう」
私「当事者は君の母親です。君は生まれただけ。バク母に『私たちの罪を話す』言われたんだぞ」
バク「この壺には生まれなかった双頭の赤子の遺体。それは俺の兄弟」
私「えぐいことするわ」
バク「100の亡骸の上に俺がいてな」
私「なんでマッドサイエンティストの罪の告白を聞くはずが、実験動物側から懺悔されてるの?」
ラマチ「あいつにも事情があったんだな」
私「バクージャジャへのヘイト下げるためか~~~」

ケテンラム「よう」
私「お幾つですか?」

ちなみにここのイベント戦はラマチが「力を合わせる旗振り役」として当時のグルージャジャを超えることで『ラマチとしての強さ』そして『武王の継承』に繋がるのでとても良い。
イベント戦闘はどれも熱くて素晴らしいですわ。

・王位継承
冒頭で全く期待されていなかったラマチに向かって飛ぶ民衆の大声援。
意味わかんね。
お前らがこぞって応援していたゾラージャやコーナが負けたのに、ほとんど応援していなかったラマチ勝利でこんな大声援になるんだ。
このシーンやるなら、冒頭のラマチのシーンやっぱり違うのでは?
そしてトライヨラで不自然なほど描かれないゾラージャ。

~一方その頃~
サレージャ「ケテンラムが全部の石持ってたわ。ラッキー」
私「わざわざ分割管理していた黄金郷の鍵を、一人に全部持たせていたのですか!!??」
サレージャ「あと宝物庫からその先の鍵も取ってきたで」
私「有能が過ぎる!!!」
ゾラージャ「じゃあ君もう用済みだね」
私「なんで!!!???」
いや、なんで?
サレージャ、途中でわざわざ1カット使って「私はなんとしてでも黄金郷にたどり着かなければ……」みたいな描写あったよね。
これで終わり?(終わりでした)
なんでサレージャは黄金郷を目指したの?
もしかしてゾラージャに王位取ってもらって重鎮になりたかった?
今でもガラフへの手紙執筆任される+第一子の直属を任されるくらいには階級高いのに???

・荒野
面白かった。
ここ評判低いの納得出来ない。
暁連中のいない、エレンヴィルとの二人旅最高。
付近の魔物の糞を使っておびき寄せて盗賊団のアジト襲撃とか「現地なりの解法」感あって凄くいいじゃん。
やっぱり私は派手でヒロイックな話よりも、少ししょーもなくてもその土地の雰囲気が感じられるエピソードが好きだな。(これは本当に個人の好みの問題)

トライヨラ襲撃。
ケテンラムさんが無能無能と叩かれている世論を感じるけれど、
遺跡にたどり着いたゾラージャが力を手に入れて襲撃ってケテンラム「確かに発端は俺が鍵を奪われた事かもしれんが、こんなん想像出来るか!!!」と言っても間違いじゃないと思う。
というか多分、鍵奪われてすぐにグルージャジャに報告に来たからこそあの場所にいたと思うので、そんな無能だとは思わない。
マジの無能なら今頃自宅で療養してるよ。
でも年齢設定はしっかりしてくれ。
(こういうのに「後のパッチで語られるでしょ」みたいな意見あるけれど、後から評判悪いところに帳尻合わせの設定ねじ込むのなんて簡単だし「不具合起こしても後からパッチ当てればユーザーは納得してくれる」みたいな製作スタイルを助長する言動だと思っているので反対)

あと全種族が結集して『爆弾列車』作るカットシーン、作中で一番好き。

・以降
ここからはあまり面白くなくて、言及できることは少ない。
アレクサンドリア周り、Lv97から始めて風呂敷広げてまとめきるっていうの、ちょっとハイテンポ過ぎたかな。
設定に気持ちが乗っていく前に終わっちゃった。
後述のゾラージャ、スフェーン項あたりで話すことになると思う。
ED曲の「Smile」めっちゃ好きなのでファンフェスで聴くのが楽しみ。

◯キャラクター
・ウクラマト
全然、嫌いじゃないよ。
私は真っ直ぐな主人公が好きなんだ。ときに間違えたとしても、真っ直ぐであろうとする心が好きなんだ。
まぁ、試練で『無知故に争い、知りて絆を結ぶ』を受け継いだはずのウクラマトがゾラージャに対して全く理解しようと踏み込もうとしなかったのが「俺たちが継承戦で学んできたものはなんだったの?」と言いたくなったけど。
最後に「でもお前、青いフビゴ族じゃねぇか!(意訳)」って言い出したときは「ゾラージャを理解しなかった末路の台詞として完璧すぎるわ」と笑っちゃったけど。

--閑話--
いろいろ言われている「……オヤジから何も受け継いでないなんて、そんなことあるか」「青いフビゴ族は、アンタとグルージャしかいねぇだろ!バカ野郎が!!」について。

まず、継承の儀道中でラマチは「武はゾラージャ、理はコーナ。私はなんだ……?」から「私が継ぐのは民と平和を愛する心だ!」でぞラージャに対しては「武を継いだ」という認識だった。
でもゾラージャは最後の試練で幻影グルージャジャに負けて、ラマチは勝利した。ラマチはトライヨラの武王になった。
つまり、ゾラージャは武を継げなかった。
武を継げなかったゾラージャに、ラマチの思う父親との繋がりとは。
ラマチ「うーん、見た目かな」
それだけ!? でもまぁそれだけだよな。ラマチ、ゾラージャのこと何も知らないもん。

ゾラージャ「やはり……俺は…… 奇跡の子……などでは……」
ラマチ「奇跡の子だぞ。青いフビゴ族じゃん」
デリカシー。

解釈戦士「ちょっと待てぃ!ラマチのこの言葉の意味は『私は養子だけど、ゾラージャお前は実子じゃん。確かに血の繋がった一人息子だろ!』という養子から実子への羨望だぞ」
言いたいことはよく分かるし、私もそれを描くのが一番ドラマチックで好きなんだけど、
作中でラマチが一度も養子コンプ拗らせていないから、その解釈は裏付けが無いんだ。

やっぱりこのシーンは「最後までウクラマトはゾラージャの内面に対して無理解だった」という決別なんだ。
ちなみにこの後、トライヨラの野良会話で
ウクラマト「くそっ……。心の内を見せてくれないなんて言ってないで、もっと踏み込めばよかったんだ……アタシから……!」
って言っているので、多分、開発末期に「いや、いい感じの台詞を録ったけど、これ文脈終わってんな」からの
「しゃあねぇ!トライヨラでウクラマトに言い訳させっか!!」でシーン追加したと思っている。(裏付けのない解釈)
だって↑の台詞、絶対にゾラージャの亡骸の前で言わせた方がいい……。
--休題--

・ゾラージャ
父親を継ぎたい、超えたい。
という姿勢を一応は一貫して見せてくれたけれど……。
冒頭の「戦争で領土拡大して、"逆に"平和を知らしめる」みたいな主張、意味わかんなくて意味わかんなった。
だってそりゃ意味わかんねぇよ。ゾラージャ自身、そんなの心にも思っていないもん。
意訳すると「父上を超えるには……もっと統治して……もっと平和にする……」だぜアレ。

「父上は金色アルパカ捕まえたんだろ!俺もだ!!!」
「父上はヴァリガル倒したんだろ!俺もだ!!!」
このあたり良かった。第一子の威厳、見せつけたねぇ。

「親父の幻影に負けた!!一つ頭煽りされて怒ったから選者殺す!!」
ここで『双頭コンプ』をプレイヤーに見せつけたいのはわかるけれどさー。
突然すぎて受け止められないんだって。

解釈戦士「ゾラージャの描写が少ないのは、ゾラージャが内面を見せようとしなかったこと、ウクラマトが知ろうとしなかったことの反映だぞ」
じゃあヴァリガルマンダ倒した後の「やはり、あれを倒したところで「奇跡」の証明にはならんな」とか
幻影父上に負けた後の「私では超えられんのか……幻影"すらも"……」とかもいらねぇだろ。
隠すにしても見せるにしても中途半端なんだよ。

あと、なんで子供作って捨てたんすか???
ここが一番の謎。なんでグルージャが存在するの。
こいつが生まれて捨てられた意味、シナリオ優先以外で、ゾラージャ視点での理由つく?
断言する。黄金のレガシーで一番に歪な存在はグルージャ。
グルージャ「どうして僕を、家族にしてくれなかったの」
ゾラージャ「父親に選ばれなかった俺に、父親など務まるものか……」
これが実際にあった会話。ビビる。
これだけでゾラージャの評価は地に落ちるだろ。本当にキャラクターが可哀想。

・バクージャジャ
なんでヴァリガルマンダ解放したの???

えっと、バクージャジャ視点でそこまでの経緯を書くと、
 ハヌハヌ試練 -> コーナの成果を盗む。クリア
 モブリン試練 -> ゾラージャの成果を盗もうとする。失敗。
 その後 -> ウクラマト誘拐で、証強奪。
で、バクージャジャは「ズルしてクリアすればいい」から「クリアしなくても、クリアしたやつから奪えばいい(特に弱いウクラマトから)」に思考が変わっているの。
だから、以降の動きは「クリアさせて、奪い取る」なわけ。

なんで「クリアさせて、奪い取る」やつが、ヴァリガルマンダ解放で『妨害』を試みるんですか。
あと選者ダイレクトアタックで失格の説明をハヌハヌで受けている=選者には失格にさせる権利があると認識している、からの「選者へのダイレクトアタックではないからセーフだろう」でヴァリガルマンダ解放を出来るか?

  1. 生まれてこれなかった兄弟たちのために、せめて王になって報いようとしているバクージャジャが、

  2. 他の候補者にクリアさせて証を奪い取ろうとしているのに、

  3. 失格になるかもしれないヴァリガルマンダ解放で、他の候補者の妨害をする

意味がわからん。
シナリオ上の意味はある。
「うおー!バクージャジャはヴァリガルマンダを解放する悪いやつ!!倒すぞ!!」
というラマチ、プレイヤーへの動機づけ。
この時点でキャラクターとしてのバクージャジャは死んだ。
以降こいつは、思想も動機も感情もなく、シナリオを見せるための道具でしかない。

グルージャジャ以来の双頭の傑物という恵まれた設定から、糞みたいな扱い。本当にキャラクターが可哀想。

・スフェーン
ゾラージャよりは丁寧に描かれていたと思う。
ラマチと冒険者が見ていないところで独り言で懺悔する、とか。

でも割と直ぐに「かつての姫君から民愛だけ抽出した機械です」みたいな説明されたよね。
いやぁ、感情移入は無理です。
Lv90-98まで一緒に旅をしてきた後に明かされる衝撃の真実!とかならまだ葛藤があるけれど、
私たち、出会ってまだ間もないんです。
声色作って、辛いという感情を持ったフリをする、トライヨラ虐殺をした機械で敵です。
なのでラスボス戦、感情が高まらなかった。(BGMは歴代最高)

でも最後の「さようなら、私が愛したアレクサンドリア。」は最高だったな!!!!
スフェーンはアレクサンドリアを愛していた。
たとえ機械でも、それだけは真実だから。
(それしか真実じゃないから、最後の台詞として完璧なんだよな)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?