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いち書店員から見た”転売ヤー”

例の転売ヤー記事が話題からなかなか消えませんが、ここ4〜5年の書店店頭の転売ヤーのことを思い出しながら思ったことをつらつらと残しておこうと思います。

コロナ禍の鬼滅転売ヤーの横暴さ

 鬼滅の刃がアニメで爆発的なヒットになり、コロナ禍も重なって完結間際の頃には店頭の問い合わせや重版の入荷に合わせた予約などいろんなことが起きたのは記憶に新しいかと思います。クリスマスなどが重なったりしてなんとしても全巻揃えて欲しいと言ったご要望を多く承ったのもこのタイミングです。
 こうしたお声にはなんとか応えたいと思ってお店も本部も商品の確保に奔走をしていたわけですが、その一方でどう見ても“自分のため“でも“誰かのため“でもない買い方をしようとする人というのがいました。
 当時はまだセルフレジの普及もしきっていない頃合いでしたから、対面のレジでやりとりになるわけですが、買い物かごにどっさりと鬼滅各巻を詰めれるだけ詰めて、「さぁ会計をしてくれたまえ」とばかりにドンとカウンターにのせるわけです。

【おひとり様各巻1冊まで】ってでっかくPOP書いてあるのに

 そうして「おひとり様1冊まででお願いします」と言うと、なんかゴネるわけです。ああまたこれかと。こういう話をあちこちで聞きました。

別のパターンもあります。

 一応1人1冊を守ってはいるんです。でも1日に何回も来るんです。本屋はシフト制で朝と昼と夕方と夜でレジのスタッフが違うことなんてまぁ普通ではあるわけですが、交代を見計らって来るわけです。でもその日の責任者とかは流石に朝から夕方くらいまではいるから、どこかのタイミングで気づくんですね。「この人何回買ってんの」と。
 で、どこかのタイミングで声をかけると「ひとり1冊でレジに持ってってるやろ!」とゴネるわけです。どうしても必要な方にお届けしたいと思って必死にかき集めた商品がこうやって在庫を減らしていくのです。お店によっては売り場に並べるのをやめた所もあります。頭を悩ませる事態でした。

これに加えて書店の悩み:窃盗

 本屋が消えていく要因のうちの少なくないベクトルを占めている、世間では「万引き」と呼ばれる窃盗犯罪。この鬼滅フィーバーのタイミングは仕入れと売り上げと在庫が合わないと言うのが本当に多かったタイミングでもありました。
 1冊とか2冊とかいうレベルの話ではないんです。鬼滅各巻5冊ずつ合わない!(一例です)とかそういう次元です。量がもう個人でどうとかいうレベルではない、組織的な反抗すら疑うような規模で、実際防犯カメラとかで特定して後を追うと、数人行動の軽ワゴンに乗り込んで逃げていくということも。こういうことが決して一部のお店での限定的な話だったとは思いません。街中の「本屋さん」然としたお店の方がこうした被害は多かったかもしれません。ここ数年の書店の閉店具合が尋常じゃない理由のうちの一つには、間違いなくこうした窃盗犯罪による売上の消失で、営業継続のための資金がショートして回らなくなったからということが背景の一つとして存在しているというのは事実としてありますし、鬼滅のあとも呪術廻戦SPY×FAMILY東京卍リベンジャーズetcと続いていったわけです。
(ガチの一番直近だと先月のヒロアカや呪術完結の時の特典付きのものもそんな感じ)

この行き着く先は結局ヤフオクメルカリ

 前者にしろ後者にしろ、最終的にそれらの行き着く先はプレミア価格でヤフオクメルカリなのはいうまでもないわけです。書店は理不尽な問い合わせと窃盗被害に悩まされ、本当に欲しいと思っている人たちは本来あったであろう在庫を手に取ることもできず、誰も幸せになれない「価格を釣り上げて転売しようとする」この行為を、どうやって肯定的に見ればいいのでしょうか。

 今一度皆さん思い出してみてください。どこに行っても売ってなくて入荷まちでいつ入るかもわからない予約をしてやっとのことで手に入れることができた/できなかったあの頃を。あの時に買い占めたり盗んで転売してた人たちがいなかったら、もっと早く手に入れることができていたかもしれなかったのです。

 ですから、そうした行為に対して肯定的に見ようとする動きに対して、微塵たりとも肯定できる隙は存在しないのだというのを改めて思うのでした。

本以外も扱ってると苦労がN乗にのしかかる

 本以外にも色々扱ってはいるのでこれ以外にもいろんな転売ヤーの標的になったものをめぐる戦いは同時にあったりもしましたが・・・

・PS5やSwitch
・ポケモンカード/ワンピースカード
・クルトガメタル
・にじさんじコラボのシャープペン
・一番くじ
・ホロライブのウエハース

にじさんじコラボのシャープペン、発売当日に親子で彷徨う姿を見かけたのが一度や二度ではなく、案の定転売の餌食になっていたというのが直近だと一番わかりやすいかもなぁ・・・あれは見かけて辛かった。

だから私が思うのはとにかく

そういうこと。許さぬ。

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萌特化書店員
萌特化書店(仮)で商品部バイヤーとしてコミックの施策担当を生業にせし書店員。リアルジョブは書店名を隠してますが同上コミックバイヤーです。コミックラノベ方面の話題に絡んだ話とかたまにします。