ロングツーリングの記憶ー14 平滝沼公園でのこと
文章でロングツーリングの心の風景を書く試み。
ある年の5月連休、神奈川を出発して、宗谷岬まで行った私は本州へ戻った。竜飛崎を回ったところで休憩中です。
これまでのお話はマガジンから読めますのです。
もはやnoteでゴーツートラベルです!…やで。
* * *
津軽半島を時計と反対回りに走って
平滝沼公園。
迷い込んだのか道に呼ばれたのか
ここにたどり着いた。
静かに桜を眺める。
ほころび始めてこれから満開を迎える桜。
愛車を前にして地面に腰かける。
ここまでよく走ってきたと思う。
この前後のタイヤで何百キロも。
ここまで来るのに無謀な走りをした。
遠くで家族連れがレジャーシートを広げている。
その家族と私しかいない。
今日は久しぶりに気持ちを落ち着けられそうだ。
ここは穏やかな日差しと
咲き始めた桜と。
ヘルメットを脱げば
エンジン音もなく、風切り音もない。
両手に伝わる振動もなく。
視界の広がりを感じる。
ヘルメットを被れば
エンジン音が絶えず聞こえてくる
騒がしい世界。
フルフェイスの狭い視界からしか
覗けない世界。
そこにしかない魅力がある
と思っていてヘルメットを被るのだ。
そこから
ヘルメットを脱いだ世界へ戻ってきたときに
自分が二つの世界を行ったり来たりしていることを知る。
ヘルメットを被っていてもそうでなくても
目の前の景色は変わらない。
変わるのは自分の心の有りようだ。
ヘルメットを被った視界は、
それまで心の奥にくすぶっていた感覚を
心の表面まで引き上げてくれる。
陰と陽といった単純な構図とは違う。
知らない道を探検するだけではなく
自分の心のなかも同時に探検するような感覚。
心のなかを逍遙する
というと高尚な響きだ。
ゆっくりと立ち上がり
桜を見上げる。
走って緊張した神経を
ほぐしてやる時間も必要なのだ。
自分のなかにまた
ふつふつと湧いてくる気持ちがある。
まだお昼前だ。
今日の行先は
これから考えてもいいだろう。
最後までご覧下さいましてありがとうございます。またお越しくださるとうれしく思います。