わたしの春
立春を過ぎると春。
出発前に、地図を確認しておこうよ。
わたしの春は、わたしたちの春、でもあるのです。
一本道。
道には迷わないよ。
さあ、行こう。
早川のセブンから。
夜明け前に出発して、行き先は河津。
伊豆半島の河津は早咲きの桜が咲く。
ただ東伊豆を南へ。
日の出前に走りだせば、渋滞とは無縁だ。
やがて海の向こうが白んで太陽がやってくる。
この時期の陽射しは有り難い。
まだ車の少ない国道を流しながら深呼吸する。
冷たい空気と暖かな陽射しと。
太陽が水平線から離れるのを見て、河津に着く。
気温が上がろうとする時間。
屋台や駐車場はまだ準備さえ始まっていない。
川沿いを歩き、色の濃い桜を楽しもう。
そろそろかまだまだか、
三分咲きといったところ。
満開ならば、ずっと向こうまで目を見張る色が続くだろう。
ほころび始めた桜からは
冬のあいだ蓄えていた静かな力を感じる。
川辺に腰掛け、
流れる水の音をきいて変わりゆく空の色を眺める。
桜に色を与える空は
それ自体が色の移ろいのなかにある。
空はいつも変化の途中だ。
朝は昼に、昼は夜に、夜は朝に。
ひとときもとどまることなく
巡りつづけている。
桜も、
花が咲いて散ったら終わり、ではない。
葉が繁って、
紅葉して、
落葉して、
力を蓄えて、
また咲く。
物思いにふけっているうちに、人が増えてきた。
賑やかになれば、
さっきまで居場所だったところの空気が変わってしまう。
地上の空気もまた、変化し続けている。
その場所に執着はない。
静けさが賑やかさに変わろうとする頃、
わたしたちはまた走り出す。
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