ロングツーリングの記憶ー9 引き返すところ
文章でロングツーリングの心の風景を書く試み。noteでGo To トラベルですわ、くほ。文章での旅は無料な上に、noteでゴーツーだと、自粛しなくてええのである。すぐれものやね。みんなnoteでごーつーやったらええのにね。
さて。
ある年の5月連休、神奈川を出発して八戸でフェリーに乗った私は、苫小牧から雪の残る北海道をひたすら北へ向かっていた。ガソリンスタンドのおじさんから、稚内という地名を聞いて行き着いたところ。
これまでの話はマガジンから読めますのです。べんべん。
* * *
国道275号へ入りスロットルを開ける。
空知は曇天だったけれどこちらの天気は快晴。
いまさらながら北海道は大きい。
景色は白と黒と青になった。
本当に空が青い。
真っ青だ。
どう形容すればいいのか。
青の彩度を極限まで上げたような。
地上がモノトーンであるがためにいっそう青く見える。
右へ左へ緩やかなカーブに沿って走り続ける。
途中でパトカーとすれ違う。
真っ白いピンネシリ岳を時計回りに迂回して
モノトーンに鮮やかな青を加えた世界を滑っていく。
60キロほど走り続け浜頓別で左に折れて
海沿いまで出ると横風に殴られる。
空の青に海の青が加わり横風に煽られて
気分も真っ青だ。
ライダーや
悲しからずや
空の青
海の青にも
染まず・・・横風に煽られる
気温は4度。
体感気温はそれより下がる。
何が悲しくて最果ての地で海風に煽られているのだろうか。
それも独りで。
自分が望んでここまで来たくせに
ヘルメットの内側で文句を垂れている。
視界は開けたけれど
ずっと変わらない海沿いの景色を走り続けて
このまま最北端までいくのかと思うと
だんだん心のうちで
淋しさと焦りのような気分がうずいてくる。
もうこの景色はわかった。
次に行こうよ。
自分で選んだ道なのに
寒さと横風に余裕を失っていた。
宗谷岬の手前で道は急に高度を上げる。
宗谷丘陵。
ここからの素敵な景色がウェブ上にはたくさんある。
今日はどこまで。
宗谷岬まで。
これ以上北へは行けない。
ただ走り続けて行き着くところまで来てしまった。
雪景色のなかを初めて走ってきたこともあるし
そのなか
朝から眉間に皺を寄せるような走りを続けてきて
気持ちは昂っている。
それに
途中から予想に反して青空に恵まれ
この天気の下で行き着くところまで行かなければ
という気持ちにも急き立てられていた。
この時期の北海道をよく知らない私は
翌日の天気を考えると
雲行きが変わる前に祖父母の家に戻らなければ
という思いが強かった。
晴天の昼間であの風だ。
帰りも海沿いを走ることを考えると
「せっかく来たのだからここらで一泊」
とは到底思えないのだった。
結局私は
達成感も何もないところへ来てしまったのか。
実際に来てはみたものの
感慨というにはまだ生々しい感覚しか出てこなかった。
「来たからには、帰らなければ」
最後までご覧下さいましてありがとうございます。またお越しくださるとうれしく思います。