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ロングツーリングの記憶ー11 雨と疲れの一日

文章でロングツーリングの心の風景を書く試み。
noteでGo To トラベルですねん。noteでゴーツーだと、中止も自粛もないのである。キャンセルしたところで手数料もありませんわ。補償も無いけど。
ごっついな。ゴーツーだけに。・・・わけわからんね。


さて。

ある年の5月連休、神奈川を出発して、雪景色の北海道を走り続けた私は、へとへとになりながらも、また本州へ戻ろうとしたのであった。

この日走ったのは、
父方の祖父母の家から札幌を経由して室蘭まで、200キロ弱。

 いま気になって調べてみると、室蘭から青森に渡るフェリーは、2008年までだったのですか。
すると、この話は2008年以前に走ったときのものだということが、
…今、明らかになりましたのねヾ(*´∀`*)ノキャキャ


これまでのお話はマガジンにあるのですわ。おほほのほ。


*   *   *


雨の止んだ合間を狙って
祖父母の家を出発した。
それは文字どおり合間だった。
低く重たい雲から
雨は当たり前のように降ってきた。


とりあえず札幌へ出た。
国道沿いのファストフード店で雨宿り。

こんにちは
濡れねずみが一匹来店です。
カッパを脱いでお店に迷惑がかからないように
と思うけれども
雨の中、100キロも走っていると
何とも申し訳ない感じになる。
お店のお客は
おや、という感じで私を見る。

いやあどうも、濡れねずみです。


昨日の疲れが残っている。
今日はさすがに距離を稼ぐ気にはならない。
海沿いは十分走った。


雨は本降り。
窓のそとに目を遣る。
雨が作る窓ガラスのまだら模様。
頬杖ついて見ているうちに思い出した。


小学校のときにお世話になった先生が
写真雑誌に載っていた。
子供を撮るのが好きで
私も飼育小屋でアヒルと一緒に
被写体になったことがある。

先生は雑誌のなかで
雨の日にも面白い写真が撮れる
ということを語っていた。
そこに添えられた一枚には
10歳くらいの子供が写っている。
男の子か女の子か覚えていない。
子供は雨粒で一面濡れた窓ガラスの向こう、
部屋の中からこちら側の空を眺めている。

少し下のアングルから
窓を見上げるような格好で
撮った白黒写真だ。

子供は少し首をかしげ
斜め上を見て
考え込むような
雨を恨むような
明日の天気を心配するような
表情をしている。

私も子供の頃は同じような顔を
していたのだろうか。

……こんな日は退屈だ。
外で自転車にも乗れず
友達の家に行くのも遠慮してしまう。
宿題はほったらかし。
テレビでも見ようかな。
夕ごはんの買いもの楽しみだな。
まだ行かないのかな。
……。


雑誌の写真と
自分の昔の姿とを思い出して
雨音のする窓のそと、空を見上げてみる。
空は、店の大きな看板に遮られていた。
雨も何もあったものじゃない。

明日からのことを考えよう。
今夜、室蘭から青森行きのフェリーに乗ろう。
まさかあれから大人になってこんなことしてるとは。
小さな時の私には想像もつかなかった。
バイクに乗るだけならまだしも
行けるところまで行ってみようなんて。


長い休憩のあと、雨の中を走る。
ヘルメットのシールドには
雨粒の作るまだら模様。
時おり左手で拭いながら。

市街地を走ると
社会の流れのなかに戻ってきた気がする。
誰ともしゃべってないのに
車の流れに乗っているだけで
社会を構成する一員になった気分だ。



そこからどうやって時間を過ごしたのか
室蘭でフェリーを待っている記憶につながる。
待合室でバイクは私だけ。
片手で足りる乗客。
広さをもて余す船内。

世間は渋滞を作って、行列を作って、
休日を楽しんでいるのだろうか。
ここにいるとそんなの本当だろうかと思う。
テレビのニュースが嘘のようだ。

眠くなってくる。


そうだ。
筋肉痛だから温泉にでも、と思ったのに
行きたかった先は通行止めだったんだ。
まだ雪が残っていて。
疲れたな。
よく走ってきたよ。
雨なのにね。

今日はどこまで。

それはまた明日。


最後までご覧下さいましてありがとうございます。またお越しくださるとうれしく思います。