いわなければよかったのに日記
わたしは深沢七郎ではない。
しかし最近、いわなければよかったのに、と思うたことがあった。しかし言うたあとでは、昔の言い回しでいうところの、後の祭り、あるいは覆水盆にかえらず、こぼれたミルクはくさかった。
そういうことである。
ここのところ、すこし興味を持って、なんとなく調べものをしている。そこでリーマン幾何という単語がでてきた。わたしは悪の組織(仮名)にたずねる。
言下に違うと否定された。
ですよねェ。アハハ。
そこから「リーマンについて、そういえば昔学んだ記憶があり云々…」という話が始まったのだが、わたしはまったく聞いておらぬ。自分でたずねておきながら。どうしてといえば、その話の内容は、わたしの理解を超えているのである。
こういうのを馬の耳に念仏、というのか、馬耳東風というのか、馬ってかしこい動物だったように思うけれど、なぜそういう言い回しになるんだろう、とリーマンとは違うことを想像して時間が過ぎていた。
そういう何やらわからない単語の羅列のなか「りーまんめん」という単語が出てきた。わたしは、それまで聞いていなかった時間を埋め合わせようという姑息な思いつきから、即座に質問をしたのであった。
リーマン麺。
いや、そうではない。
どうやらリーマン面である。
いや、リーマンmenであろうか。
manの複数形である。リーマンmanたち。
それゆけリーマンマン。
彼らはラーメンマンでないのだから
その額にはおそらく
「中」と書かれてはいないであろう。
わたしの理解はその程度である。
しかし悪の組織(仮名)は機嫌をそこねたのか
話はそこで唐突に切り上げられたのであった。
わたしは何かイケナイことを言うてしもうたのであろうか。
阿呆だ、というのはどうにも損をするようである。
聞くはいっときの恥とはいうものの、
聞いたところで呆れられ
正解が得られぬのであれば、
聞いたそばから恥の垂れ流しである。
こういうのを少し前、
リーマンショックと言うたのかもしれぬ。
そういうわたしはいまだ、
顔の焦点の合わない、
恥の多い人生を送っております。
いわなければよかったのに。