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縦型動画が世界を制する〜スマホ時代に知っておくべき動画制作の作法とは〜

スマートフォンで動画を見ることが当たり前になった今、皆さんが見ているのは横長の動画でしょうか、縦長の動画でしょうか。実は今、スマートフォンで見やすい縦長の「縦型動画」が増えています。

Instagram(リール)を中心に活動する縦型動画のクリエイター Kionaさんは、まったくの初心者から動画制作を始め、縦型動画を中心に大活躍中です。なんと3年でSNSのフォロワー数35万人、取引する企業はグローバル企業含め30社以上に。今なぜ、テレビや映画、配信ドラマなどで慣れ親しんだ横型ではなく「縦型」の動画なのか、そして、横型の動画とは何が違うのか。Kionaさんによる解説です。

※この記事は、Kiona『縦型動画で世界を制す~一瞬のマジックで心をつかむ方法』(技術評論社)の一部を再編集したものです。


なぜ、いま「縦型」なのか

この記事のタイトルに当たり前のように使われている「縦型」ですが、あらためて、なぜ、いま「縦型」なのかを考えてみたいと思います。

まず縦型動画とは、アスペクト比(縦横サイズ比)が「16:9」の動画を指します。

そしてなぜ、縦型動画なのかといえば、結論をいってしまえば、スマートフォンが縦型だからです。

スマホが縦型だから、動画も縦型が流行っている。

もう少し丁寧にいえば、多くの人がスマホを使っているから、スマホの向きを横向きに変えることなく、フルスクリーンで再生できる縦型動画が流行っている、ということです。

この記事を読んでくださる方も実感していると思いますが、パソコンより、スマホでインターネットを使う人の方が多い時代になりました。

総務省の「情報通信白書」(令和5年)によると、2022年のインターネット利用率(個人)は84.9%です。8割以上の人が、個人でインターネットを使うようになっている。

また世帯別の情報通信機器の保有率の推移(総務省・通信利用動向調査)を見ても、スマートフォンとパソコンの所有が2017年度で逆転して、2022年度ではスマートフォンが90%超、パソコンが69%となっています。

スマートフォンとパソコンの世帯保有率は2017年あたりを境に逆転した
出典 : 総務省・通信利用動向調査(令和4年度)

こうしたスマートフォン主流の時代において、片手でラクに見ることができる縦型動画が主流となるのは必然だといえるでしょう。スマホが普及したから、縦型動画が広がった。


縦型動画の画角を意識した撮影がもはや主流となりつつある

ものすごく単純な話にもかかわらず、縦型が〝新鮮〟に受け止められるのには理由があると思います。

我々は長らく「横型」で生きてきたからです。背景には長きにわたるテレビの時代がありました。もちろん今でもテレビの影響力は甚大です。僕もテレビは大好きです。しかし、SNSの普及によって、多様化が進んだことも事実です。

テレビ番組の流れを組んで生まれたYouTube は、現在も「横型」が主流で比較的長い動画を見る媒体ですが、YouTube ショートの普及により、YouTube も縦型の比率が増えてきました。プラットフォームによって、ユーザーが求めるものも異なります。

僕は、SNS総フォロワー数が250万人を超えるシンガーソングライター・しまもさんからの依頼で、YouTube 用の縦型のフル尺ミュージックビデオを作成しました。

長い尺の縦型MVをつくっているミュージシャンはほとんどいないので、時代の最先端を行くしまもさんだからこその着眼点はすごいと思いました。

強いものではなく、変化していくものが生き残るとダーウィンは言いました。

メディアの進化と同時に、コンテンツも進化していくべきなのです。

時代の要請にもっとも適した縦型動画。誰でも手軽にエンタテインメントが楽しめる画期的な媒体です。僕はこの縦型動画を主戦場と決め、日々、魅力あるコンテンツの発信に取り組んでいます。ここには誰にもチャンスが存在し、誰もが人気を獲得することができる可能性が満ちているのです。

縦型動画が新しい常識をつくる

縦型動画の普及によって、従来の〝常識〟も変わりました。

動画をはじめる方に知っておいていただきたい、3つのポイントをお話ししましょう。

縦型動画の普及とともに変化してきた3つのポイント。動画の尺は短くなる傾向(①)、情報は自ら取りにいく(プル型)時代に(②)、情報源は書籍や雑誌といったメディアから動画主体に(③)

1. 長い→短い

これまでの動画、つまり映像は、長いものが一般的でした。
映画は2時間程度。テレビ番組は、たとえばドラマだと1時間程度、特番などは2時間程度。YouTube 動画は、番組によって差はありますが、数十分から、長いものだと1時間を超えるものまであります。

ある程度長さのある動画をつくり込むのが、動画制作の常識でした。それが、1秒でも成り立つ世界に変わった。僕の動画は30秒程度が基本ですが、10秒程度のものもあります。つまり動画の尺が短くなった。これが、新常識の1番目です。

短くなったことで、つくり込まなければ映像として成り立たない、という常識も変わりました。テレビの世界では、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、ADがいて編集マンがいて……と大人数のスタッフで映像をつくり込んできたわけです。一方、SNSの世界では、スマホで何気なく撮った2、3秒の映像が、世界でバズる作品になる。

尺が短くなったことで、つくり方も変わってきました。映像業界が長く、キャリアも技術もある方の動画で、全然バズってないものも見かけます。視聴者は、あなたの作品をテレビで見るわけでもなければ、映画館で見るわけでもない。 「俺はプロで、いままでこんな仕事やってきた」といくらプロフィールでうたっても、スマホの中で輝く作品をつくれなければ何の意味も説得力もありません。SNSの世界にはプロもアマチュアもない。みんな平等で同じ舞台に立っている。「俺はプロだから」みたいな余計なプライドを捨てた人が勝ちます。

2. いつでもどこでも「取りにいく」

新聞のテレビ番組表を見て、今日はこの番組を見ようと決めて、その時間までにテレビの前に座る。メディアに自分を“合わせる”見方が、かつては一般的でした。というより、それしか僕たちに選択肢はなかった。

いまや、情報は“取りにいく”時代になりました。SNS上の動画も、ネットフリックスをはじめとする配信プラットフォーム上の情報も、見たいときに、見たい場所で、見たい分だけ、さらには見たい速さで、見ることができるようになっています。自分から情報を取りにいく時代。クリエイターは、そんな時代に合わせて選択される動画をつくらなければならないということです。

欲しい商品の情報や使い方など、すべては動画の視聴で手に入れる時代

3. 動画はすべての情報源

僕は新しい機材を買ったとき、まず、YouTube 検索をします。多くの場合、YouTube にトリセツ動画があがっているので、それを参考にして使い方を学びます。僕のような人、増えているようです。

動画があらゆるものの情報源になりつつある。トリセツ動画はもちろんですが、スポーツや料理の実演などによるノウハウの解説など教育系の情報はいまやほかのメディアより、さらにリッチな情報を、好きな時間に効率よく収集できるようになりました。

カメラのテストシューティングの比較なども、動画だからこそ、多くの情報量を提供できる

Kionaさんの著書『縦型動画で世界を制す~一瞬のマジックで心をつかむ方法』(技術評論社)には、縦型動画の技術から、動画作成を続けていく上での心構えや習慣のほか、これから動画をはじめる人や、技術もキャリアもあるのにバズることができないベテランクリエイター、もっとコンテンツをバズらせたいと考えている人に役立つことすべてが詰め込まれています。もっと活躍したい動画制作者必読の1冊です。


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