「酸味の誤解」を解くコーヒー
コーヒーの勉強をはじめたばかりの頃、頭でっかちの僕はコーヒーの起源の地であるエチオピア産の豆を飲み比べて歩いた。
酸っぱいお店が多かったが、門前仲町のピコというお店のエチオピアはとても柔らかくて綺麗な味だった。
ピコのマスターがやっていたコーヒー教室に参加して、KONO式の器具に出会い、あまりの味の違いにびっくりして、KONOコーヒー塾の門を叩いた。
そこで社長の淹れてくれたエチオピアの味ときたら!
そうか、これが酸っぱいとは違うコーヒーの酸味か、と気がついたが、これやっぱり結構な経験を積まないと気付けない味だな、とも思った。
だから自分の最初のブレンドは、はじめて飲んだ人にもわかる、「酸味の誤解」を解くコーヒーを作りたい、と思ったのだ。
エチオピアのフローラルな酸味と、フルーティな酸味が身上のタンザニアで作った立体的な酸味を作る、というところまではアイディアの基幹として間違っていないと確信して、さまざまな農園のものを試したが、どうも腰が軽い感じがして、どっしりとした重心を作れるもう一つの豆を模索していた。
ブルーマウンテン由来の苗を宣教師が移植したというパプア・ニューギニア・シグリの持つハチミツのアロマに出会って、これしかないと確信した。試行錯誤、紆余曲折の結果、4年目にしてやっとハウスブレンド「ジリオブレンド」が完成した。
豆の選定から、焙煎度の吟味からやって、頭にあるコーヒーのイメージを作ったブレンドを、常連さんから「お宅のコーヒー」と言われるのが、コーヒー屋としてなにより嬉しい。
煎じ詰めて言えば、コーヒー屋の仕事の要衝は旨い“ブレンド”を作ることにあるんじゃないだろうか