桜庭 紀子

短歌、詩、川柳、その他文章など。X→https://twitter.com/norikosakuraba

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  • 短歌五十音

    • 38本

    「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。

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    所属している短歌結社「塔短歌会」の結社誌「塔」に掲載された月詠をまとめています。

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    短歌のあつまり。

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    主に短歌の評論をまとめていきます。

最近の記事

「秋の百句会2024」での95句(川柳)

見返りがすこし鈍った詩語である 木琴の音を乾かす役まわり 折りながら久遠をこめたオブラート ポンペイの消滅 ラジオから流れ 遠足の日に足音を忘れる 懸垂を優雅にしたい春もあり 偽記憶に必ずあるな鴨川が 蝶番たぶん背中にひとつある 洗顔をしなさい流星おちるまで 石室をひらく遥かな待ち合わせ 手にのせてかわいいだけの蝸牛 秒針に目を凝らしたら誰かいる 記憶にはうなじ、堤防、光のみ 地元には人魚を祀る駅がある カーブミラーにあらわれる古墳 芝生にも赤い

    • 『塔』2024年9月号 月詠(若葉集)

      茉莉花の殖えゆく庭に立ち止まる自転車ひとりで曳いていた日に 絶対と言う時すこし目をそらす嘘が苦手な躑躅のような フェンスの向こうにはぐれた藤の花が咲きさびしいことを知られずにいる 向日葵の顔のくらがりこの夏の暗さと思い目を逸らしたり 病葉を歌集にとじて次ひらく時にこの葉が見せる表情 黄昏の芒野原の背のたかさ 終わらないものだけ待っている (三井修選、p.168) ・選歌後記に黄昏の〜の歌を引いていただいていました。 ・七月和歌山歌会記に一首引いていただいていま

      • 短歌五十音「ま」枡野浩一『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである』

        手紙を待っている。「あなた」からの手紙を、である。しょっちゅう手紙は来るけれど、その中にあなたからの手紙はない。 そう言いながら、きっと誰からも便りがなかったらさびしい。たまには誰かかからメールが来るような、そんな一年でありますように、と願う。 枡野浩一は、1968年東京生まれ。コピーライター、ライター等の職業を経て、1997年に短歌絵本『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』を二冊同時発売してデビューした。 今回取り上げるこの歌集は、『枡野浩一全短歌集』と銘打たれ

        • 水沼・桜庭・春木014

          こんにちは。 私がお二人に投げた「地方で短歌をやる、をどうやってやっていこうと思っていますか?」という質問、それぞれに日記で答えてくれてありがとうございます。読んだ私の感想と私の考えていることを書いていこうと思います! ちなみに今年の甲子園に関しての私の知識はほぼゼロでした。申し訳ない。 春木さんへ: 春木さんの日記を読んでいると、短歌をやることに田舎も都会もあんまり関係ないのかな、と思えてきます。ただ、私にとっては和歌山は対面の歌会が少ないのがネックです。今は所属している

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        記事

          『塔』2024年7月号 月詠(若葉集)

          身分証床にさらして眠ってる言わないことはなかったことで 就職祝いのイタリアンより帰り道の風の湿度の方をおぼえた なめらかな石のひとつだ薄闇にうかぶ背中のつめたさなども 定期借家のフローリングにラメきらめいて私の跡はまるごと消える 死にたいとかは思わないまま洗濯後ゴミ箱に入れたお下がりの服 風葬、ということもなく話さない記憶を飴のように溶かした (真中朋久選、p.201掲載) ・五月和歌山歌会記に一首引いていただいていました。 ・第七十五回zoom歌会記に引いて

          『塔』2024年7月号 月詠(若葉集)

          『塔』2024年6月号 月詠(若葉集)

          金星をすぐに見つける君だから髪いいねって褒めてくれたね 息ながくメールは続き夫にも告げないことを君には告げり 病弱な君の部屋にはテディベアと造花いっぽん大事にされて ノープラン 未来について君は言い木陰に燦々笑みをこぼした 手放せばいつか戻ると思えた日鳶の翼の裏を見ている また明日、といつかきっと、は振り方が違う大きく大きく振った (栗木京子選、p.219掲載) ・初めて鍵の後ろに掲載していただいていました。うれしい。また、ノープラン〜の歌を選歌後記で栗木さんに

          『塔』2024年6月号 月詠(若葉集)

          『塔』2024年5月号 月詠(若葉集)

          踊り場にうずくまる昼イヤホンで君の嫌いな歌聴いている 雪しんと降る夜にランタン提げてゆく ランタン すこし君に似た灯だ 夕立の街を手ぶらで駆けぬけた僕の笑顔は今もう遠い 後遺症 君の眼鏡に似た眼鏡奪って床に叩きつけたし 二月まで白い山茶花散りつづけ死までの長さ僕に教えた (花山多佳子選、p.192掲載)

          『塔』2024年5月号 月詠(若葉集)

          短歌五十音「ひ」東直子『十階』

          短歌五十音シリーズ、「ひ」の歌人として取り上げる東直子氏は、1963年広島県生まれ。1996年に第7回歌壇賞を受賞し、歌集には『春原さんのリコーダー』『青卵』などがある。短歌だけでなく詩や小説、エッセイ、評論、イラストレーションなどの分野で幅広く活躍。書肆侃々房の新鋭短歌シリーズの監修も担当している。 『十階』は、ふらんす堂の「短歌日記」シリーズの一冊として出版されたもの。2007年1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページで毎日掲載されたその日の短文と短歌がま

          短歌五十音「ひ」東直子『十階』

          「水沼・桜庭・春木」011

          こんにちは。 BRUTUSの「一行だけで。」特集、読んでなかったのですが春木さん水沼さんのやりとりで気になって読みました。結果、読んで良かった……。個人的には短歌の部分だけでなく詩や川柳のパートも気になりました。 春木さんの質問、推しの短歌?みたいなことかな、BRUTUSの特集と同じ意味なら忘れたくない一行ってことかな。いくつも候補はある気がするけど、選ばなければならないならば かなと思います。 でも、同じ大森さんの も推したいし、 東直子さんの も好きです。 この3

          「水沼・桜庭・春木」011

          短歌五十音(ぬ)沼波万里子『砂のぬくみ』

          今回の歌人、沼波万里子は1921年東京生まれ。歌誌「箒木」を経て「潮音」に入社。1946年、旧満州で夫と一女に死別、引き揚げ。1956年に再婚し、一女に恵まれている。2013年死去。中国残留孤児のボランティア活動も行なった。 歌集『砂のぬくみ』から気になった歌を見て行きたい。 「東京」という連作の中の一首。 頭上注意足元注意〜とたたみかけるように詠み、続く「靴、靴、靴」が、複数人の靴がどんどん影を踏んでゆく場面を文字で表しているように見える。東京の忙しなさや都会に放り出さ

          短歌五十音(ぬ)沼波万里子『砂のぬくみ』

          短歌五十音(て)寺山修司『寺山修司青春歌集』

          寺山修司の歌集を取り上げようと思ったものの、実際に歌集を読んで混乱してしまった。「青春」とタイトルについていて、確かに初期の短歌は青春香るような作風なのだけれど、後半の短歌はどこか土臭い、おどろおどろしい世界を詠んでいるからである。初期の作風を脱ぎ捨てて、後の作風に変化していった心境はどんなものだったのかと思うが、今回は前者の歌を中心に書いていきたい。 寺山修司は1935年青森県生まれ。1954年、第2回短歌研究新人賞特選を受賞。前衛短歌運動の中心として活躍した。1971年

          短歌五十音(て)寺山修司『寺山修司青春歌集』

          「水沼・桜庭・春木」008

          すみません、1ヶ月ほど交換日記を止めてしまいました……。 子供の頃に感じた「交換日記自分のとこで止めちゃってる」というものすごく焦る気持ちを何十年ぶりに再体験しました。申し訳ございません。 やっと文章を書ける体調になり、水沼さん春木さんの前回の日記を読み直していました。 水沼さんの読書遍歴からの短歌への辿り着き方も、最後の瀬戸夏子さんの歌の引用の仕方もまたカッコ良すぎてずるかったですね……。音楽的な文章の流れでした。 春木さん、私はゲームのことはあまりわからないのですが、春

          「水沼・桜庭・春木」008

          短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005

          前々回の春木滉平さんの回で、春木さんから『現代短歌』5月号の原稿料で何を買いましたか?と質問を頂いたので、まずその回答から。   (春木さんの回↓) https://kmetpd.hatenablog.com/entry/2024/04/03/232206   初めての短歌での原稿料ということでもったいなく思う気持ちもあり、しばらく引き出しにしまっていたのですが、春木さんの質問を受けて使おう!と決心。 本を購入することは決めていたので、地元のちょっと大きめの本屋さんに行きまし

          短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005

          短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

          『初恋』は染野太朗の第三歌集。 恋人のいる「きみ」を思う、行き場のない主体の感情が繰り返し描かれる歌集である。 染野太朗は1977年、茨城県生まれ。高校在学中から作歌を始め、「まひる野」に入会。第一歌集『あの日の海』で日本歌人クラブ新人賞、第二歌集『人魚』で福岡市文学賞を受賞している。 恋の相手の言動によって一喜一憂してしまう心情が描かれる。 1首目、「きみ」のことをまた疑ってしまう。船は猜疑心の喩えか。一旦心の底に沈んでいた猜疑心がまた浮かび上がってきたのだろうか。「無

          短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

          短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」002

          朝起きると、ブルーライトで目を覚ますためにベッドの中でスマートフォンを触る習慣がある。 たいていXのタイムラインをぼんやり眺めるのだが、ある日の朝、1件のポストが目に止まった。   「短歌交換日記をやってくれる方をゆる募。週一ぐらいで日記(ないしそれに準ずるテクスト)+一首以上。公開等は三往復ぐらいしてから考えましょう。」   投稿されたばかりの水沼朔太郎さんのポストだった。 やってみたい、とすぐに思ったものの、一旦冷静になろうと起き上がって朝食を食べた。 食べ終わってから、

          短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」002

          短歌五十音「さ」 笹井宏之『ひとさらい』

          今回笹井宏之を取り上げようと決め、歌集を読み返したものの、評を書くのがとても難しい、と感じた。 私は歌集評を書く時に、歌集の中で気になった歌を一度全てWordに打ち込んで、その中でタイプ別に歌をカテゴライズする作業をする。 第一歌集『ひとさらい』も、気になる歌をリストにし並べてみたが、彼の歌たちをタイプ別にカテゴライズしていく作業が進まない。 どの歌も並列に並んでいるように見えるのだ。 連作の中で歌は違和感なく並んでいるが、一首一首の独立性が高い。 彼が連作を作るときどういう

          短歌五十音「さ」 笹井宏之『ひとさらい』