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聞くことー「あん」


甘いものがくれる
幸福感は

スイーツが好きな女性なら
誰しも実感していることだと思います


この映画は
甘党でもない男がやっている
どら焼き屋に
ある日、老婆があらわれるところから
はじまります。



🎬 あらすじ


町角のどら焼き屋

働きたいと言った老婆と
やんわり断る店主


作ってきたの、と置かれた彼女のあんは
驚きの美味さで

店主は思わず
手伝ってくれませんか?とお願いする

あん作りを教わる店主

美味しいどら焼きは評判を呼ぶが
らい病の過去が知られ
老婆は店を辞める...............


🎬 あずきの声を聞く


店主・千太郎が
徳江さんのあんを食べるより先に
その病を知っていたら

店で雇うことは
なかったのでしょう

世間とはそういうもの



だからこそ彼が
世間の目を、病を知る前に
徳江さんの「あん」に出会えたのは
奇跡なんだ。


千太郎が教わる
あん作りの様子は
どこか微笑ましい

一番大事なことは
小豆の声を聴くことだという



世間は
聞く人よりも
話す人の方が
圧倒的に多い


皮肉にも
徳江さんがらい病だと告げたのは
店の常連・ワカナの母親で



店に閑古鳥が鳴き
徳江さんが去って

千太郎は
ワカナに誘われ
徳江さんの元を訪れる


🎬 好奇心が、二人の距離を近づける


ワカナはワカナで
徳江さんに聞く
『指、どうされたんですか』


訳を知った千太郎は
ギクリとするだけ


のらりくらりとかわした徳江さんに
ワカナはなおも聞く
「徳江さん
 指、どうされたんですか」


その好奇心が
「徳江さんに会いに行きませんか」
と千太郎を誘うほど

彼女の中で
徳江さんとの距離を
近づけている


そうして療養所を尋ね
徳江さんが辿ってきた道を知った時

千太郎は
自身がひた隠しにしてきた過去を
書き綴り、送る


そしてもう一度
訪ねた時には

小さなカセットに収められた
彼女の声が残されていた



お墓の代わりに植えられた
一本の桜


冬の薄陽に照らされた苗木の向こうに
小さく小さく見える昼の月



また桜が咲いた頃

千太郎は
明るい太陽の下
精一杯の声をあげる


🎬 小さな声


ワカナも
千太郎も

誰かに聞いてもらいたい
小さな声を
どこかに隠して生きている



徳江さんが言った
「何かになれなくても
 私たちには生きる意味があるのよ」
の言葉は



その長い人生の
時間をかけて

誰にも聞いてもらえない
その声を
誰よりも“聞いて”きた
徳江さんの口から聞くから
響く


皆、自分よりもずっとずっと
その声を封じ込められ
生きてきた人に
出会ってしまった時

その声に触れた時


聞いた人は
自分にしか上げられない
声をあげるんだ



誰よりも
自分が
自身の声を“小さな声”を
聞くために。



「どらやき。
 どら焼きいかがですか」


(写真はお借りしました)

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