第二次予備校 男と女の出会い
挨拶を経て
厳しさも有り先に見える授業をしてくれるNとO先生でしたが、放課後のある課題も残っていました。それはTとYを彼らに紹介する話です。
(うーん、どうするべきかな。まぁ流れに任せるか。)
授業終了後Yが話しかけてきました。
Y「今日で講習終わりだね。学校が始まるまで自習室通うの?」
T「そうそう、ウチも行こうかなって思ってる。」
私は、一呼吸しながら答えました。
私「まぁ一週間か6日程度空いてるから、家にいても無駄だしなあ。」
始業式まであと僅かです。時間は待ってくれません。
丁度、教室に残っていたMとD君がやってきました。
M「あ、どうもMです。智聖から聞いてるよね?」
Yが上目遣いで見始めました。
Y「あ、紹介の話。よろしく。一応彼氏いるから。」
Mは、特に驚かず自然に聞いています。
D「あ、同じクラスのDです。Eとも同じガッコ。」
「Tちゃん、地元どこなの?」
T「ウチは、○○県の○○ってところ。遠いよ。」
D「知ってるよ。おれんちから遠いけど。」
D君は、真逆の方向でしたが、Tの地元から通っている人が学校にいるようです。ただ、用が有るわけでもないので、土地勘はありません。
D「それで良かったらメアド教えて!」
M「あ、俺も。二人の教えて。」
(自然に聞いているが、俺のおかげだよな・・・。)
Yは、それを聞いてニヤニヤしています。
Y「智聖さ~、彼氏に内緒にしてもらっていい?」
私「いや、言わないとまた揉めるだろう。」
「俺は見なかったことにしておいてやるよ。」
Y「やったー。まぁ、バレても宿題教えてもらうとかでいいしね。」
T「じゃあ、智聖君のから教えてもらっていい?」
何故か、私からでした。D君は少し驚いた顔をしています。
当時は、iモードのパカパカケータイ。そして、PHSの時代です。赤外線もありませんし、LINEなんぞ遠い未来。普通に電話番号の登録です。数分後無事に完了です。
DとM君は、教務課から戻ってきたE君とそのまま帰りました。
T「あれ、あのツーブロックの人だけいつもこないよね。」
「なんか意味あるのかなぁ?」
確かにいつも僕らの所には来ないし、授業英語以外は被ってませんでした。この時は特に気にしてはいなかったことを覚えています。
Y「へへへ・・・、今日はモテるなぁ。」
出ていった後もニヤニヤしています。
私「お前、また何かくだらないこと考えてるだろ?」
Y「さあね♪とりあえず帰ろうよ。」
時間は15時半です。この日は、自習室に行かずまっすぐ家に帰る方針です。4日間の疲れを癒やすために休むことに。
Tを見送ると、Yが改札で意味深な事を言うのです。
Y「Tちゃん仲良くしておくといいかもよ?」
「あたしの勘だけど、気があるかも。」
そう言って、そのまま反対側のホームへと向かいました。
私「じゃあね、また明日。」
何だかんだ言ってようやくこれで帰宅です。
(大変濃い4日間だったなぁ。新学期になったらまた新しい出会いがありそうだな。。。)
自習室について
自習室期間は、たった数日。出来ることは部屋で講習の復習と英熟語や構文の勉強をしていました。受験まであと1年もありません。まさに待ったなしなのです。
(ふう。もう午前も終わりか。早いな。)
自習室最終日、ガングロギャルのTは、少し遅めに来ています。家が遠いのでどうしても朝早く起きなければいけません。Yは、この日彼氏とお花見に行っていました。
T「1時間勉強しただけで疲れちゃった。」
「早いけど、昼休みにしちゃう?」
時間を見ると正午が間もなく過ぎようとしています。いつもより30分早いが、提案を受け入れることにしました。講習に参加してしていたメンバーは、部活などある人を除いて少人数しかいません。
私「今日は、ガップルやD君、Yがいないからゆっくりしよう。」
この日は、レベルアップテストが午後に控えていました。部活で言う自主練習です。各科目でマラソン演習するテストがあるのです。空いた時間を使ってこまめに通う必要がありました。
(とりあえず13時半からレベルアップテストがあるから30分前には教室に行こう。)
自習室を降りると、何やらたくさん人が集まっていました。我々が受けた説明会の様子ですが、受付には30名程保護者と並んでいます。我々の時にいた理事長も話してましたが、GWまでが入校者のピークになる。そして、2学期になると現役生の進路変更=専門学校とか推薦入試で3分の1ぐらい減ると聞いています。
T「いやぁ、結構いるねぇ。皆入る人なのかな?」
「ウチの地元の人は、あんまり居なそうだけど。」
見渡す限り、派手めな人、地味な人、真面目な人、今風な人様々な人達が来ていました。
私「これから入場テスト受けるんじゃない?」
「英語のゼロクラスも人が増えてきそうだねえ。」
長居をしてもしょうがないので、早々に立ち去ることにしました。いつも通りコンビニで買い出しにいきます。
T「あ、コレコレ新作のスイーツ。甘いのたまらないのぉ。」
「コレもあれも頼むと、太るから見ないようにしよ♪」
やはり女の子は甘いものに目がいってしまいます。
私「細いから、ちょっと腹に入れてもイケるっしょ。」
さり気なく褒めておきました。
T「いやぁ私小学校まで結構太ってて。」
「中学でテニスやって走るようになってから痩せたんだ。」
私もそうでしたが、小学校時代の5年生ぐらいまでは肥満児でした。ローレル指数でよく引っかかり保健の先生から注意を受けたものです。
T「智聖君も太ってたんだ。じゃ似た者同士だね♪」
屈託のない笑顔を見て何故かドキッとした瞬間でしたね。
場所は変わってコミュニティスペース。講習中と違ってガラガラです。貸し切り状態なので少し大きな声を出しても迷惑がかからないレベルです。
(今日は、静かだなぁ。あと40分まったりしよう。)
T「レベルアップの勉強した?」
私「昨日の夜少ししたよ。覚える事多いから」
「つい後回ししちゃうんだよね。」
基礎→発展→上級のようなレベルではありますが、実際は基礎は中学レベルから高2終了レベルまで広め。発展から入試レベルの問題演習となります。上級は、難関大学向けなので今のところ縁は無さそうです。
それぞれ30項目ずつテストがあるため、合計90をしないとクリアできません。発展と上級は、現役生だと夏休みまではどうも追いつかない気がしました。
科目も、現代文、小論文、古文文法、単語、漢文があり、英語は、文法、構文、英熟語、発音、長文読解まであります。
ここで社会科を入れると日本史であれば、文化史と近代史も履修しなくてはいけません。
1科目5単元×2,社会科の3つを入れると13個もテストがあるのです。国立大学など受ける人は、これに数学と理科も履修しなくてはいけませんから、時間がいくつあっても足りないと思います。
そう、数を勘定するだけで頭が痛くなります。13個+それぞれ3つのレベル別に分かれているわけですから、まさに地獄のマラソン演習と言われてるのも過言ではありませんでした。しかし、本屋などで大学の過去問など見ていても、今のスキルではとうてい太刀打ちすら出来ないのは、火を見るより明らかなのです。
T「今日は、英語を受けてみる。明日始業式終わったら、また来なきゃね。」
(2年生までなら、始業式は午前中で終わる。)
(3年生は、そのまま遊びに行くのは厳しいよなぁ。)
T「そういえば、智聖くんは彼女いないの?」
「なんか、コロコロ変わってそうだよ。」
どうやら、遊び人に見られているようです。
私「いや、もう暫くいないなぁ。」
「つか、失恋続きでアタリくじをなかなか引けないよ。」
プリンを食べながら、私の遍歴に聞いて真面目に聞いてるようです。
T「てか、Yちゃんとホント何もないの?」
「初めて古文の授業の後に二人見た時カップルかと思ったもん。」
(またこれかぁ笑 まさに第三者の目線なのかな。)
私「いや、あいつは超面食いだし、俺みたいな一重の短髪は好きじゃないよ。」
「まぁ、色白で可愛いと思うよ。」
「ただ、付き合ったところで、気が強いし、思ったこと言うから喧嘩になるよ絶対。」
私共の母親達からも、M君達からにも見られていることで困り果てていました。追しかけ女房ならぬ押し付け女房にさせようとしている様に見えるからです。
私「Tちゃんこそ、D君に好かれているじゃん。」
「メールとか遊びに誘ってきたり無いの?」
そう、6日前に連絡先交換をしていたので、少し気になっていました。
T「いや、特に無いよ。」
「自習期間も、挨拶はしたけど、何もない。」
実は、連絡先交換した日の夜にD君から電話があったのです。
D「よぉ。モヤモヤしちゃって電話しちまったよ。」
「さっきは、連絡先繋げてもらってありがとなぁ。」
Dは、緊張感は残っていますが、お礼を言っています。
私「いや、いいよ。それで用はなんだい。」
どうやらどのように距離を縮めていいものか、相談に乗って欲しいようでした。結局、メールはこの日どう打とうか迷っている模様です。
私「そういえば、俺よりも付き合いが長いEとかM君に聞いてみたらいいんじゃね?」
D「Eは、色々あってな。Mは、Yにゾッコンだから。」
(要は、話せる状態じゃないかってことか。)
ただ、この日は春期講習の疲れもあり早々に電話を切りました。
T「今は、元カレの件もあるし、マイペースに勉強するだけだよ。」
「明日から学校も始まるしね。髪黒にしなきゃなぁ。」
日焼けサロンに通っているので肌色は黒くメイクは常に派手目。公立高校ですが、さすがに金髪~銀髪は駄目のようです。
時計を見ると、もう30分前になっています。そろそろレベルアップの勉強を再開しにいかなくてはなりません。
私「じゃ、そろそろ行こうか。」
T「だね。」
「あ、今日Yちゃんいないし、帰りどっかお茶してこっか。」
思わぬ打診に胸が躍る発言でした。ちょっとニヤける瞬間を無理に抑えて、いざ勉強です。