第一次予備校時代2
新勢力と旧勢力の対峙
予備校で仲良くなった女子Yと私は、校舎裏側にある自動販売機の近くにあるベンチでだべっておりました。すると、基礎クラスのC君がやってきました。相方のB君はやってきません。いつも通りだとセットで来るはずです。
C「いやあ、Bは新しく来たJってやつと揉めてるんだよ。」
どうやら、発展クラスに来ているJ君と何かあったようです。実は、この彼は見た目こそひょろくてガリ勉風なんですが、相棒のG君同様に目つきが異常に悪いのです。授業終わった後にトイレで彼らが遭遇した時に目が合ったとか合ってないとかで、揉めたようです。
C君は、気付いて止めに入ったんですけど、興奮が止まらない。G君も覗きに来たんですが、止める気配はありません。
すると、どうでしょう。B君はJ君の胸ぐらをつかむ羽目になりました。
その瞬間、合気道の技かわかりませんが、J君は、柔術のような技でいさ締めたようです。一瞬の勝負でした。倒れた後に引きずり倒して壁に押し付けた挙げ句、ツバを吐いて立ち去ったようでした。
B君は、意識朦朧としてフラフラしてた時にたまたま予備校の先生がトイレにやってきて異変に気付きました。「何があったんだ!」と介抱してくれたとのこと。友人であるC君は、事の顛末を全て話しました。
この時代は、今と違って大怪我をしない限り当事者同士の話し合いなどで大事にならない頃でした。B君は、幸い腕を軽く捻った程度でしたが、先に手を出したことを確認されて喧嘩両成敗となったようです。
C君「いやあ、あのJってやつ、かなり強いぞ。B、一応空手やってた経験者だ。」
「それがあの一瞬で。」
私とYは、j君がそんなバイオレンスな生徒とは思えなかったので、まさに阿鼻叫喚の如く、同じ机を並べて勉強する気概が減ってしまいました。
C君は、B君とその後帰宅しましたが、私とYはまだその場所でグダグダ話しました。すると、G君がやってきました。
G君「さっきC君が来たでしょう。色々と話は聞いてるかな。」
「Jは、見た目はあんなんだけど、地元でも結構悪いんだよね。」
「家も金持ちなんだけど、色んな人脈もあるよ。」
人脈とは、当時若者向け雑誌などで人気が出ていたサークルの話です。イベサーという小さな所帯でクラブイベントやファーストフードで会合をする最先端の遊びでした。
ただ、イベサー自体は黒も白もグレーもあり、見た目はチャラい人の集まりであっても、暴走族やチーマー上がりのOBなどが仕切っている話は聞いてたので、余程白なサークル以外は普通の高校生は参加しにくかったと聞いてました。
パラパラやユーロビートをバックミュージックにして踊る事はどこも同じですが、パーティー券の販売で収益関係など厳しいノルマがある噂も。
G君は、テニスと空手関係で外でも学校でも優秀な成績をおさめている将来有能な人でした。ただ、うちのような男子校Fと違って生徒数もそうですが、有名大学付属でしたので、遊んでる大学生の先輩など縁もあり、自信に溢れていました。
パラパラ・・・・。結構な風と雨が吹雪いてきました。
「ま、雨も降ってきたしそろそろ帰ろうかな。」
台風予報の秋雨前線がやってきました。私もYも濡れたくないので、そのまま帰宅。
YとJの甘いカラオケ
秋の10月末。新しいG君達がやってきて1ヶ月が過ぎようとしています。最終週のある日曜日に校内模試がありました。うちの予備校は3ヶ月に1回模試を開催します。基礎クラスと発展クラスの入れ替えをするためです。
浪人生のクラスとは違い2年生までは2クラスしかありません。B君とJ君は、前回の出来事から全く話さないそうです。間に入ってるC君とG君で色々と根回しが。
どちらも裏方の黒子として機能しているようです。
しかしある時から女子のYは、J君を気になりました。異性とかではなくて、その人脈や地元の悪い連中とつるんでいるというギャップからです。若い頃は、こうゆう男がモテるものです。Jも満更でもない無い様子。ただ、Yには年上フリーターの彼氏はいると聞いています。この当時は、私は会ったことが無いのでよくわかりません。
Yは、元々中高一貫女子校に通う普通の女子だったようですが、中3の終わりぐらいからはクラスメイトと繁華街でナンパしてきた高校生や同年代の男子とそれなりに遊んできたと聞いています。
たまたま参加した音楽のイベントで知り合ったのが、フリーターの彼氏でした。彼は、3歳上で他県出身の人でしたが、何年か浪人して大学に入れなかったことから都心部でひとり暮らしをしているようです。
JとYは、一緒に帰る事になりました。ターミナル駅まで送るそうです。11月のある日曜日にYからメールが来ました。Jからカラオケを誘われたと。Jは見た目から想像できないですが、かなりのテクニシャンスキルを持っていて、遊びなれてるYですら
「甘い雰囲気に呑まれそうになった。」
と後日ぼやくほど。つまり、J君は距離感を縮めるスキルを持っていたということでした。案の定、カラオケが落ち着いた時にキスをされたとか。丁度、年上の彼氏と喧嘩していた彼女は甘言誘惑に負けそうでした。但し、当のJは火遊び程度。つまりはゲーム感覚で迫ったようです。
つまりは、彼氏持ちの女子高生がどれだけ我慢できるか、こちらの誘惑につられるか、知りたかっただけ。当時の私からすると、
(あんな普通の男に、何でそんなスキルが・・・。)
しかし、これが後ほど起こる面倒くさいトラブルに無関係の私が巻き込まれるとは思いもしませんでした。
jのとばっちりからの誤解
Yは、とてもお喋りな子でした。本来であれば先程の出来事は誰にも話さないでしょう。しかし彼氏とJに天秤を掛けているとどうしても彼氏に今後の事を説明したくなったようです。
Y「どうしても今は、距離を置きたい。好きな人が出来た。」
彼氏「急過ぎるだろ。その男に会わせろ。」
J君にメールでその出来事を話したそうでした。すると、J君は、予想外の返事が来たようです。
J「生憎、知らない彼氏に会うつもりはない。」
「会った所で、喧嘩になるだろう。」
「Bと同じ目に逢いたいならリクエスト聞いてやる。」
これはお馬鹿さんなんですけどね、当時YはB君の事件をすっかり忘れていました。それでこの話を考えた挙げ句、彼氏の方が100%痛い目に遭ってしまう。恐怖を感じたそうでした。
結局、Jは予備校に来ていましたが、もはやYに興味すら無くなったそうで、同じ学校のメンバーとすぐ帰るようになりました。
そんなある寒い11月の夜です。たまたま塾の先生と私とYで3人で帰ることになりました。先生は、国語科の臨時講師Tさんです。私とYを繋げてくれた素敵な紳士でした。当然、彼氏がJ君に怒っている話は知りません。すると、駅前のある出口まで来た所、Yは急に歩かなくなりました。
目線を追うと、長髪のバンドマン風(ポルノグラフティのボーカル似です)のイケメンが立っていました。私は直感で
彼氏か知り合いか?と思いまして、会釈しました。すると、
エンジニアブーツをカツカツと音を鳴らして近づいてきました。
彼氏Aさん「お前か、Jってのは。俺の女に手だしてるよな。」
「柔術だが、合気道だが知らねえが、俺と戦ってみろ。」
(あれ?!、人違いじゃね?)
すると、どうでしょう。T先生が私と彼の間に近づいてきました。
「貴方、Yさんの彼氏さんかな。この彼は智聖。人違いだよ。」
「J君は、ここにはいない。トラブルになってはいけないよ。」
そうすると、私とT先生に睨みつけて
「おい、J。お前今日は大人がいるから引いてやる。」
「次は、気をつけろよ。」
彼女であるYは、その光景を見て驚いてました。当然です。全くの人違いの相手に喧嘩を売る。そして、通ってる塾の先生にガン飛ばしてる始末。彼らは、この後公園で大喧嘩したそうです。
家に帰るとYからこんなメールが来ていました。
「今日は、ホントにゴメン。うちの彼J君に嫉妬しちゃってたみたい。話したあたしがバカだった。T先生に今度謝るから一緒に来て。」
(あらあら。まぁ、しょうがないな。)
まさに、時機到来を予感した日でした。
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