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なんちゃって夢十夜 5.
いつだったか、こんな夢を見た。
龍の子その2:
また来たぞ。と、声がする。
お母さん。おい。お母さん。
私は目を閉じたまま、呼ばれているのが私なのはなんとなくわかっている。私をそんな風に呼ぶのは、なんだったか。ホラ、あれだ。
いつだったかの、龍の子だ。
パチリと瞼を開くと、なにもいない。当たり前だ。あれはたぶん半分夢心地で聞いていた声だもの。本当には居ないのだ。
そうだ。本当にはいない……。
またうつらうつらと瞼がおりていく。寝返りを打って、片手を枕の下に突っ込んで……。
おーい。お母さん。お母さん。ねぇ、そう呼んでも構わないと言っただろ。お母さん。お母さん。ちがうのか。ちがうんなら……
「ほんとの名前を教えろよ」
耳元で聞こえた声に、パチリと再び目が開く。
ああ、今のは、なんだったか。
冬の真夜中だ。