ソーセージが弾ける音についての考察
「もう少しソーセージの皮が弾けるときの音を考えてみたい」
と、木下さんは唐突に切り出す。
ソーセージが弾けようが、茹で上がろうが、知らない。
とは言えず、黙って聞いている。
OK、と木下さんはそれでも話を聞いてくれると認識しているのか、そこでハイボールを流し込んだ。
「ソーセージが弾けるのは、中の肉汁がもうここにとどまっていられない、という我慢の限界だというところまではいいかな?」
そんな話全然知らないし、初耳です、とは言わない。
言っても意味はない。
「肉汁に意思があるとして、肉汁は外に出たいのだろうか」
肉汁に意思はない。
「もちろん出たいに決まっている。なぜなら肉汁は冒険家だ」
情報が渋滞している、このときの木下さんを野放しにすると危険だ。
きっともうすぐソーセージの話は忘れてしまって別の話を始める。
「ソーセージは冒険家なんですか?」
「いいや、ソーセージの中の肉汁の野心だよ」
野心、をもったソーセージを私は食べたくない。
「溢れるんじゃない、溢れさせるんだ」
で、弾けるときの音は?
そして夜は更けていく。