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僕らはとりあえず雨宿りをやめた

濡れますよ、という暇もなく、木下さんは進んでいく。
仕方なくついていく僕は風邪をひいてはいけない時期だったため、気力で乗り切ろうと気持ちを入れる。
どうにもならないことはわかっていた。
木下さんは振り返ってくれない。
だから、僕はついていくしかない。
木下さんに濡れる、という概念はないのかも知れない。
歩きたいから歩いている、とその背中は雄弁に語っていた。

木下さんは時々、通り過ぎる車の方を見る。
特に意味はないのかもしれない、あるいは、その車に乗っているかも知れない誰を探しているのかも知れない。

どっちでもよかった、ただ、濡れて冷たくなる体の、芯までは気持ちで持って保っているんだという気力で成り立っていた。
傍目では成り立っていなかったかも知れない。

木下さんがようやく、止むまで歩くし、と呟いた。
雨が?と一応聞いてみたけれど、答えてくれない。
ずんずんと足を前に進めているだけの木下さんの背中はとても広くて、透けて見えるブラ紐をお守りみたいにじっとみていたよ。

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