瓶ビールと甘い卵焼き
あなたは、卵焼きの味について、どんな好みがあるだろうか。
甘い卵焼きが好きと言う人、卵焼きに甘いはありえないと大きく2つに分かれるように感じる。
僕はと言うと、甘くない方が好みであるが、甘い卵焼きももちろん大好きである。
というか、卵焼きはどんな味が肥えようと、中に何を入れようと、ほぼ失敗は無い。
誰が作っても卵焼きはうまい。
ところで、だし巻き卵と卵焼きは少し違う。
料理人からすると、当たり前だ。馬鹿野郎。お前の口は何を食べてきたんだ。馬鹿野郎、と、怒鳴り散らされることが恐ろしいが、もちろんだし巻き卵と卵焼きは違う。
それは知っている。
だし巻き卵で、甘いものを作ろうとすると、これはさあまり合わないような気がする。
なんというかだし巻き卵は、卵焼きとしては成り立たない。
もちろんだし巻き卵をお弁当などに入れて冷めて食べる人もいるだろうが、だし巻き卵を美味しく食べるためには、その出来立て熱々を中に入っている出汁がこぼれるほど熱い状態で食べるのがベストである。
対して、卵焼きは、お弁当などに入れる想定で、冷めてもうまいようにできている。
だから甘くても大丈夫。むしろ甘い方が好きと言う人も多いのではないだろうか。
出汁で引き伸ばしていない分、卵の味がはっきりわかる。
さて、その卵焼きを、今宵のあてにしよう。
飲むのは、何か良いことがあった時しか飲まない瓶ビールである。
この瓶ビールは、栓を開けなければならない手間がかかる上、瓶
は、今の時代にややそぐわないツールである。
しかし、自分で注ぎながら、そのビールを飲む行為はのんべえの憧れであり、それだけでビッグイベントであると言い切っても差し支えない。
そんな、やや時代錯誤なピンピールを手酌で飲む、に合わせるateとして甘い卵焼きを持ってこよう。
缶ビールであれば、揚げ物など、パンチのある強いおかずが必要だが、瓶ビールはどこかしっぽりと、素材を味わうような優しい気持ちにさせる。なんとなく。
こんなところに、昭和の香りが残っていたのか。