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折りたたむたびに傘は

折りたたむたびに傘は、ひどく痛そうなうめき声を上げる。

傘は歯を食いしばって耐えるような、みぞおちを深く突かれたような、耳をちぎられたような、鼻からスイカを入れられたようなうめき声を上げる。

そして僕は、それでも折り畳み傘は畳まなければその意味をなさないから、傘のうめき声を無視して折りたたむのだ。

すると傘は弱々しく語りかける。

「それでいいのかお前は、折りたたむだけでいいのか俺を、もっとやることがあるんではないか、俺は知っているぞ、お前の全てを知っている、その情報を暴露しようと思う。それが嫌なら俺をたたむのはやめよう、たたむのをやめて大きく広げるべき」

傘がそう言うので、僕は畳むのを止めて傘を広げた。

空に虹がかかるように、傘のうめき声は止み、反対に傘は鼻歌を歌いだす。

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