坂道の先で待つのは月だった
仕事終わりに相変わらず、坂道を登る。
今日もずいぶん遅くなった。
街灯もほとんどないため、暗がりの中を僕は登っていく。
木が左右から伸びていて、その枝の間から空が見える。
今日の空は穏やかで、ちょうど満月が出ている。
晴れ渡っていると言うわけではなく、雲が少し出ていて、その隙間から月が覗いている。枝の間から見える月は、まんまるでとても美味しそうに見える。
坂道を登りきって、改めて月を見ながら、冷めたコーヒーを飲む。
僕の仕事終わりの習慣だ。
街の夜景が見えて、ちょうど電車が高架の上を走っていく。
月がその上にあるので、手を伸ばして取る。
皿の上に置いて、さて、あんこをのせようか。