恋人たち
久しくキーホルダーを見ていない。
いや、鍵にはちゃんとカバーというか、何かシックな革製のものをつけているよ。
そうじゃなくて、キーホルダー、いわゆる、キャラクターだったり、地名の入った真鍮の城だったり、昭和に量産されたグッツだ。
あんなにあったのに、あまりにも見かけないので、心配していた。
どこに行ったんだろう、と。
その疑問を口にしたのも、深い意図があったわけじゃない。
沈黙に耐えかねて発した苦肉の策だった。
なんてね、とおちゃらけて続けると、木下さんは意外にも真剣な顔で目を閉じていた。
知っているのか?
何をですか?
キーホルダーの行方を。
単に廃れていっただけですよね?
表向きはね。
何やら意味深に、木下さんは言った。
いや、表向きって、それ以外に何があるっていうんですか。
と問いただすと木下さんが教えてくれた。
キーホルダーたちの行方に関する考察を。