良夜かな
僕らは良き夜にいる。
僕は女の子を地下酒場で待っている。
彼女は間も無くやってくるだろう。
やってきて生ビールを頼む、やってきたそれを喉を鳴らしながら半分ほど一気に飲むだろう。
彼女がそんなに酒を飲むのかどうか、よくわからない。
覚えていないが、きっとうまそうに飲むことだろう。
その好印象しか、僕の中に残っていないのだから。
僕らはなんの話をするのだろうか、他愛のない話で十分だ。
僕らはすでに通じ合っている。
というと、言い過ぎになる。
ほとんど何も知らないけれど、何もかも忘れてしまいそうなYOKANを感じずにいられない。
地下酒場は相変わらず賑わっている。
この小さな田舎町で、こんなにも活気のある居酒屋があるなんて、驚愕してもいいんだぜ?と地下酒場は囁いてくる。
街を代表する居酒屋であるという気概、顔にでいる。
もう顔に出ていて、それを感じることができるから僕は嬉しくなるのだ。
もしかすると彼女はやってこないのかもしれない。
僕が、何か悪い遊びに巻き込まれて、揶揄っているだけかもしれない。
そうだとしても、ドンとこい、である。
上等である。
僕は揶揄われて、尚且つ楽しめる男なのだ。
もうすでに十分しがんで味のなくなったガムを、なおもしがもうとしている。