とりあえず、茶を
帰って欲しい。
けれど無碍に、帰ってください、と言うわけにもいかない。
ここは京都である。
奥ゆかしい文化を継承している。
絶対に直接的な表現は避けるべきである。
だから、お茶漬けでも、などと歪曲した表現で帰宅を促すわけであるが、いけない、今日の相手はそんな奥ゆかしさを汲み取るタイプではない。
知的水準を疑う、というと何か偉そうに思えるかもしれないが、違う、ちゃんと教養として京都の文化を知っていないと大きな誤解を生む。
ほら、お茶漬け、のくだりで帰そうとして木下は声をかてたが、じゃあいただきます、なんて言い出している。
実際にお茶漬けを作らねばならなくなってしまった。
何という時間のロス。
帰って欲しいのに、あと数十分も引き留めることになってしまった。
だからシンプルにいかなければならない。
京都であるプライドを残しつつ、シンプルに。
どう伝えるのがいいのか、悩みどころである。
すると、とりあえず、茶を。
と向こうから要求する始末。