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木陰のパンフレット


パパが入院の日に、突然、
「主治医が代わります」と、
主治医のA先生に言われた
その理由は、
「私は院長で忙しいから」と
新しい先生を紹介され
これからは、二人体制で見ます、
等とゴニョゴニョ言われた

そして、新しい主治医は、私を見て、
「ココは終末期医療じゃないんだ!」
と、なぜかプチ切れた
看護師さんらは、A先生と、 
B先生の指示が、真逆でどちらが
正しいのか、わからないと困り顔

A先生は「入院は疼痛のコントロールが出来るまで」と言い、B先生は、
「栄養状態が少し良くなるまで」と言った
結局、B先生の意見が通り、パパさんは、
わずか1週間で退院させられ、
看護師さんからは、

「コレからは、終末期医療の病院へ、
行ってくださいね」と、知らない、
クリニックの紹介状を渡された

川沿いの坂道を降りた三叉路の
クリニックは11月だというのに、
冷房が効き過ぎて風邪を引きそうだった

クリニックの先生は、私を見るなり、
「付き添いの方は娘さんですよね?」と、
聞いてきた。私は可笑しくて、
「あの、娘と言うより妻なんですが」
と答えると、先生は声を立てて笑った  

帰りに、終末期のパンフレットをもらい、
「月に一度は来てください。来れなくなったら、その時は私がお宅を訪問します」、
「コレからは痛み止めが青天井になるけど、飲ませてあげてね。そして、いっぱい遊んであげてくださいね。遊べるうちに、ね」
と先生から言われた。

パンフレットには、緑の木陰が描いてあった
そよ風に吹かれて静かに生きたいね
サヨナラはもうすぐそこまで来ているから
帰り道は、気をつけて
坂道を上がった先に信号は無い
車が来ないか、自転車が来ないか、
歩行者は?
右見て、左みて、もう一度確認
ぶつかったら、アウトよ!
それ、いまだ!
素早くアクセルを踏んで、
私は家までパパさんを無事に送り届ける

#現代詩
#自由詩
#終末期
#主治医
#闘病記

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