パパ、メリークリスマス
12月10日、
あなたは最後の
階段を降りた
もう、二度と昇ることのない階段を
「薬を飲むために生きているのか、
生きるために薬を飲んでいるのか、
わからないや」と、あなたは言ったね
なぜ、こんなことになってしまったのか、
誰にもわからなかった
入院して二日目のデイルームで、
あなたは「明日には家に帰るぞ」と言った
まだその身体で立てるのが不思議だった
七日目の個室で、あなたは
もう動かなくなって、
「パパ、私よ、わかる？」
と、あなたの冷たい手を握った
あなたは瞳を閉じたまま、
「わかるよ」と言った
「ゴメンね」
「なにが？」
「何もしてあげられなくて」
それが私とあなたの最後の会話になった
12月初めの私の誕生日には、
チョコレートケーキを頬張っていたのにね
40年前の12月初め、あなたの
アパートでラジオを聞いていたら、
ジョンレノンが
射殺されたと
ニュースが飛び込んで来た
人の未来は、ホントにわからないね
結婚しても、合わなかったら、
三日で別れようなんて言ってた
ふたりが、こんなに長い旅を
続けて来れたなんて
15年前に事故で
光りを失くした、あなた
それからも、ひとつひとつ、
神様はあなたから、
大切なものを
奪い続けたけれど、
その度にあなたは
奇跡を見せてくれたね
「それでもね、コレは誰かが、
引き受けなきゃいけない
運命なんだよ、
オレはもう少し生きていたいんだ」
「今夜が峠です」と病院から
何度も夜中に呼び出され、
それから数日後の朝早くに
あなたは空へと旅立った
パパさん、ありがとう
15年間、お疲れ様でした
筋トレ、私も頑張るね
私がサボらない様に、
いつも見張っていてね
