空想党宣言⑨(駅でつぶやくオヤジひとり)
(このお話は空想です)
ホームの片隅で、疲れたオヤジが冷えきったオレンジ色のベンチに座っています。独り空想しているようです。
美しい光景とはとてもいえませんが、心の中で、彼は自由に飛翔したり、極楽浄土にゆくのを夢想しています。
夢見るオヤジに、罪はなく、只、日中の
闘いで満身創痍の心身の傷を自分で舐めて治しているだけなのです。
心のなかは、良心の自由、神聖ニシテ犯スベカラズ。
とはいえ、、現実世界では、彼の大切な領域は毎日のように上司や顧客から土足で踏み荒らされ、無理難題を幾つも押し付けられ、マルチタスクに翻弄される彼のこころは、休まる瞬間もありません。
古の昔から、いい大人は、叫んだり、周りに同意を求めたりはしないもの。
そっと独り言をつぶやくだけ。
今日もまた、ステーションバー(※)にオヤジがひとり、ふたりとやってきて。
男の嘆きは、ほろ酔いで、
ホームの隅に置いてゆく………
(※)ステーションバー
駅で立ち飲みを行うちいさなスペースのこと。