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自由進度読書『N』の読後レビュー

https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/n/

画像を上記サイトより引用しました。

1.『読む順番で、世界が変わる。あなた自身がつくる720通りの物語』

 まず、そのキャッチコピーの良さが光りますよね。そして惹かれます。私は読書家ではありませんが、「なんかミステリーを読みたいなぁ」と検索したら、一発で目に止まった作品です。(それだけ有名ってこともあるでしょうが)
 そして、その後には問いがきます。「720通りってことは、6章を読む順番で読めるパターンの数だよな。どこから読んでも物語が成立するってこと? なんだその天才な話は…。」
 『N』というアルファベットが、上下逆さまに読める点対称な文字な点も興味をそそると思っていたら、この小説のギミックに答えがありました。

2. 6章の物語がうっかり混じってしまわないギミック

 この作品の大まかな概要は、まず、6章の物語の冒頭部分が書かれています。その後に、「この章を読みたい人は、〇〇ページへ」的な文章が書かれています。
 初めから読んでも、どの章から読んでも、読者の好きにしてくださいということなのですね。パラパラと全体量がどの程度か確認してみると、なんと、途中から文字が上下反転しているのです。そこで、初めの冒頭部分が載っているページに戻ると、ジャンプをしやすいように載せている章の初めのページが、「この章を読む→78ページへ」「この章を読む→81ページへ」となっていて、章の間近すぎないか?とまた謎に引き込むのです。割とすぐ理由は分かりましたが、第1章は78ページから逆さまに書かれているので、読めば読むほどページの数が小さくなってくるのです。第2章は、また、通常通りに書かれているので、ページ数は増えていきます。これが、物語がうっかり混じってしまわないギミックだったのです。この時点で、もう面白い。

3.物語の概要

*名のない毒液と花*

*落ちない魔球と鳥*

*笑わない少女の死*

*飛べない雄蜂の嘘*

*消えない硝子の星*

*眠らない刑事と犬*

 上記の6つの章から成る物語です。それぞれの登場人物が、時を越え、場所を越え、絶妙につながっていくことで、「あぁ。なるほど。あの時の行動や言動は、こんな過去の経験からきていたのか。」となっていく、読み進めるほど、没入感が増していく作品でした。
 ちなみに、私が読んだ順序は、以下の通りです。
① 落ちない魔球と鳥
② 名のない毒液と花
③ 笑わない少女の死
④ 飛べない雄蜂の嘘
⑤ 消えない硝子の星
⑥ 眠らない刑事と犬

 全て読んだ後で、「あの話に戻りたい‼︎」と思って、③の笑わない少女の死を再読しました。時間があるなら、再読したい章がいくつもあって、きっと、再読すれば、「やっぱりあの章をもう一度読みたい♪」となるのだろうなと思います。

4.『N』というタイトルの謎

 読んでいて、ずっと考えていたタイトル『N』の理由ですが、私の読解力では、文章から「これだ‼︎」となるものはわかりませんでした。
 しかし、再度6章の冒頭部分が並んでいるページを読み返すと、タイトルに共通する文字に気づきました。
『〇〇ない』という部分です。前の言葉の意味を打ち消す言葉だなぁと思いながら、少し検索してみました。

 ②の「名のない毒液と花」だけが、違った文法で用いられているものの、まぁ、どちらも似たような『打ち消し・存在しない』というような意味を持っています。
 つまり、『NO』『Nai〜ない〜』的な『N』なのか?と思いました。
 他の人は、どのように考えるのだろう?と他者の読後感も気になり、YouTubeで検索して、いくつか動画を見てみました。
『そんな見方・考え方もあるのか』『確かに、作中で強調されていたな。』など、また新しい発見に繋がり、再読意欲がわきました。

5.これが『自立した学習者』『自由深度』の良さか‼︎

 「主体的な学び」という言葉が現行の学習指導要領で使用されていて、さらに、「自立した学習者」という言葉も、令和の日本型学校教育で取り上げられてきました。そこから個別最適な学びもフィーチャーされ、『自由進度学習』も認知度が高くなってきています。自治体で共通して取り組むところもあります。私自身も、ここ数年でかなり学級経営や授業のスタイルを変更してきました。まずは、私自身が「自立した学習者」であるべきだと思い、意欲的に学べる分野から学びを始めていきました。その中でも読書は、生涯避けてきたところですが、1年ほど前から、のんびり読書をするようになりました。
 そして、この本に出会って思いました。

『この本は、自由進度読書だ‼︎ 自分でどこから読むかを選び、どれだけ読むかも選べる。再読しながら、気になることを検索できる。全ての読書がそうかもしれないが、この本は、特に自由度が高い。まさにコントローラーを自分が持っている。』

 このような学習を提供できるようにしたいなと思いました。そして、そういう学習に慣れていくことで、「主体的・対話的で深い学び」を実現できるスキルを獲得していく学校生活を送ることができるのだろうなと思いました。
 言葉で表現するのは、かなり難しいですが、少しずつ、私の頭の中に浮かんできたイメージを実践し、文部科学省や有識者、優れた実践家などが述べていることを学びながら、『子どもが真ん中の学校』を創造していきたいと思いました♪

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