進化 生命誕生前のこのステップが重要だ
初めに
生命が誕生するまでには多くのステップがあります。
全てを明らかにするには、項目が多すぎ、長い時間がかかりそうです。
研究者で泣ければ、知るのは重要事項だけで構いません。
では、どのステップが知りたいですか?
現時点で、私が1番知りたい事は以下の2つです。
1.進化が偶然のできごとではなく、自律的なものに変わる瞬間
2.進化が直線的ではなく、生命らしい競争的な進化に変わる瞬間
これらが分かったからと言って生命誕生の謎が解けたわけではありませんが、生命の本質的機能の獲得の瞬間のように思います。
RNAワールド仮説に基づく生命誕生のステップ
現時点で、RNAワールド仮説が生命誕生の説明として最有力です。
RNAワールド仮説に基づいて、生命誕生の段階をおさらいしてみます。
この説のポイントは、生命の起源において、RNAが遺伝情報と触媒作用の両方を担う中心的な役割を果たしたとする説です。
RNAがタンパク質の代わりに触媒作用を行うので、この時点では生命に必須のタンパク質がなくても良いという考え方です。
この仮説に基づくと、生命の誕生は、無機物から有機物、RNAワールド、そして最初の生命へと至る、いくつかの段階を経て進化するとの考えです。
1. 物質の進化が始まる段階:原始スープと有機分子の誕生
原始スープ: 地球誕生初期、大気中に存在したメタン、アンモニア、水素などが雷や紫外線などのエネルギーによって化学反応を起こし、アミノ酸、糖、塩基など、生命の構成要素となる有機物が合成されたと考えられています。この有機物たっぷりの原始的な海を「原始スープ」と呼びます。
有機分子の集積: 原始スープの中で、有機分子が偶然に集まり、より複雑な構造を持つ分子へと変化していきました。この過程で、RNAの構成単位であるヌクレオチドも合成されたと考えられています。
2. RNAが自己複製能力を持つ段階:最初の自己触媒反応
RNAの自己複製: 偶然に生まれた短いRNA分子が、他のヌクレオチドを繋ぎ合わせて、自分自身のコピーを作る能力を獲得したと考えられています。これを「自己複製」と呼びます。この自己複製能力こそが、生命の最も重要な特徴の一つです。
RNAワールドの到来: 自己複製能力を持つRNAが出現したことで、RNAが遺伝情報と触媒作用の両方を担う「RNAワールド」が誕生したと考えられています。RNAは、現在のタンパク質のように様々な化学反応を触媒し、より複雑なRNA分子を生成することができたと考えられます。
3. 膜を獲得する段階:細胞の誕生
膜の形成: 原始の海で生成された脂質分子が、自己組織化して球状の膜構造を形成したと考えられています。この膜構造は、内部のRNA分子を外部環境から隔離し、内部で様々な化学反応を効率的に行うことができる環境を提供しました。
最初の細胞: 自己複製能力を持つRNAと膜構造が一体化することで、最初の細胞が誕生したと考えられています。この細胞は、外部から栄養を取り込み、内部でエネルギーを作り出し、自己複製を繰り返すことで増殖していきました。
4. 代謝するようになる段階:エネルギー獲得と物質循環
代謝の獲得: 最初の細胞は、周囲の環境から有機物を摂取し、それをエネルギー源として利用する単純な代謝システムを持っていたと考えられています。
代謝系の進化: 時間とともに、細胞はより効率的にエネルギーを獲得し、様々な物質を合成・分解する能力を獲得していきました。この代謝系の進化は、細胞の多様化と複雑化に繋がりました。
5. 最初の生命体の誕生:
これらのプロセスを経て、自己複製、代謝、遺伝情報の保存・伝達が可能な最初の単細胞生物が誕生しました。
生命誕生のステップのまとめ
RNAワールド仮説は、生命の起源を説明する一つのモデルであり、多くの科学者によって研究されています。
この仮説によれば、生命の誕生は、無機物から有機物、そして最初の自己複製可能なRNA分子を経て、細胞の誕生と代謝系の進化という段階を踏んで、徐々に複雑化していく過程であったと考えられます。
補足
他の説: RNAワールド仮説以外にも、生命の起源を説明する様々な説が存在します。例えば、タンパク質が最初に現れたとする説や、粘土鉱物が生命の誕生に関与したとする説などがあります。
未解決の謎: 生命の起源については、まだ多くの謎が残されています。例えば、最初のRNA分子はどのようにして生まれたのか、最初の細胞はどのようにして分裂したのかなど、解明されていない問題がたくさんあります。
今後の研究: 生命の起源の解明は、現代科学における最も重要な課題の一つです。今後も、実験や理論的な研究を通じて、生命の誕生の謎に迫ろうとする試みが続けられています。
生命の誕生プロセスで重要と考えるプロセス
進化が偶然のできごとではなく、自律的なものに変わる瞬間
生命が発生するには、いろんな物質が偶然に組み合わさる必要があります。
こんなことが起こるなんてとんでもない偶然です。
こんなこととは、この仮説では偶然に自己複製RNAができることです。
なぜなら、自己複製RNAができれば進化が始まるからです。
その後の進化は進化の結果となります。
一旦進化が始まると、進化が加速し、偶然ではなくなります。
生命に必須のDNAやRNA等の組み合わせの種類は、理論的には無限です。
しかし実際には1種類しか存在していません。
もし簡単に生命が発生できるなら、いろんな種類の生命が発生して、競い合っているはずです。
しかし、現実には地球にはなぜ1種類の生命しかいません。
その理由は、次のように考えられています。
ある種の生命が誕生した後、次が誕生するまでに時間がかかるからです。
最初に発生した生命が地球に蔓延って、他の生命が生まれる余地がなかったのです。
それほどの時間差があると言うことです。
つまり、最初の種が偶然に誕生する確率は非常に低いということです。
どれくらいの時間が必要だったかと言うと、ほとんど無限に近い時間です。偶然に物質が自律的に進化を始める確率を計算すると、地球に生命が誕生するのはありえないくらい少ないと言う計算結果です。
宇宙物理学者の戸谷先生の計算では地球では無理で、宇宙でも無理で、大宇宙でなければ、生命は誕生しないと言う計算になると、ネーチャー論文に発表し話題になりました。
その計算の根拠はRNAが発生する事はそれほど難しくない。
しかしそのRNAがつながって、自分で自分をコピーする。
そしてそのコピーが失敗したり、成功したりして進化する。
このような現象が発生するのは塩基が20個以上つながらなければならず、地球では無理だと言う計算になるということです。
宇宙でも無理なので、その範囲を大宇宙に拡大する必要があるという主張です。
この主張に対し以下の意見を述べました。
幸いにも、20塩基の自己複製RNAの進化実験を行った市橋先生から、本件にコメントをいただくことができました。
進化が直線的ではなく、生命らしい競争的な進化に変わる瞬間
生命の誕生までのプロセスには、多くのステップが必要です。
ではこれらのステップのどれが重要でしょう。
それは、物資が生命らしく進化し始めた時ではないでしょうか?
自己複製RNAの進化実験を続けていくと、進化はするが止まってしまう。
細胞構造を作って止まらないようにしても、新亜は直線的で途中で進化が限界に達するというのが実験結果です。
この疑問に対する答えかもしれないと思う論文が出ています。
先の記事にコメントをいただいた市橋先生のnature論文です。
寄生型RNAとの共進化です。
寄生型RNAが出現し、宿主RNAとの間で進化的軍拡競争が始まります。
寄生型RNAは宿主RNAの複製を利用し、宿主RNAは寄生型RNAに対抗するための適応を進化させます。
生物学界には「赤の女王仮説」と言う仮説があるようです。
この仮説は、市橋先生の自己複製RNAの進化実験では大きな効果があったと先生の著書に書かれています。
生命らしく進化するには、自分を守るだけの方針ではダメ、生き残りをかけた進化が必要なようです。
終わりに
生命の起源についてはこの二点に絞って情報を得て考えています。
この辺りにあっと驚くような事実が発見されそうな気がします。
老化研究がそうです。
老化遺伝子が見つかって、いっきょに進んだ。
量子力学のトンネル効果がこの例です。
半導体技術が急激に進むきっかけになった。
このような現象がわかると、その分野が一気に進む。
生命の誕生の分野にもそのような驚きの発見があるかもしれません。
そんな論文が突然発表されるかもしれないので、注目しておきます。
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