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ライン随想録 ペルシャの市場にて

1999/02/14 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより

随想録

わたしは中近東のバザールで、みやげ物などを見て歩き値段の交渉をするのが大好きである。
トルコのイスタンブール、イランのテヘラン、アフガニスタンのカブー ルなどには何処にいっても大きなバザールがある。
調理器具、食材など何でも売っ ているが、われわれ一時的に滞在するものとして、関心があるものは、テヘランで はラピス・ラズーリという濃紺の貴石でつくったかざり、カブールでは羊の革製品、イスタンブールでは貝の装飾をほどこした箱、イスラム絵画などが目を引い た。
最高級のものを求めるので無ければ、かなり割安の値段で手に入るようであ る。
東京のデパートのように固定価格の値段がついている訳ではないので、当然交渉次第と言うことになる。
われわれの場合、これらの国々に行ったときには調査団 の一員として一箇所に4-5週間滞在することが多かったので、暇のときを見つけて 何度も足を運ぶことになる。
これがまた実に楽しかった。  
割安にこれらのお土産を買う「こつ」は、すぐに買わないこと。
できれば現地の友人と一緒にいってもらい交渉を手伝ってもらうほうが良い。
もし現地のお仲間がいっしょでないときには、ひとりまたは複数の外国人同士で行く訳だが、できるだけ背広にネクタイなどは着ないで、現地風なラフな格好がこのましい。
ほとんど読みもしない現地新聞をさりげなく、小脇にはさみ、現地駐在員風をよそおう。
タクシ ーなどに乗ってお目当ての店先までいってはいけない。
かならず、その店の4-5 軒手前でおり、歩いて店に入る。
金持ちとみられてはいけない。
一回目はプライス・チェックだが、自分がほしいと思ったものの値段を真っ先に聞くことはしないで、他のものの値段を聞き、4番目か5番目にお目当ての品の値段を聞き、すぐに とんでもなく高いといった顔つきをする。  

甘いカモの日本人と見られて、紅茶を奥でぜひどうぞと勧められるが、さりげなく断る。
“What’s your price?”と聞かれることが多いが、言い値の4分の1、5分の1くら いの値を唱えておき、第一回目は交渉を打ち切る。
2回目、3回目と行き、プライスチェックを何回も繰り返し、底値を探っておく。
5-6回目に言い値と買値の差がかなり縮まった段階で交渉打ち切りを宣言して、小走りに店の外に出る。
5-6 回も交渉しているので、買う気があるとみて、店の人はかならず追ってくるので、 最終値を小声で2-3回繰り返す。
だいたいここで、交渉が成立するが、かならず もう一つ同様のものを同じ値段でどうだと聞いてくるので、これはきっぱりと断る。
何度も足を運ぶのは大変なようだが、しだいにこれをゲームとして楽しむよう になってくる。
店の相手も何度か通ううちに、こちらが地元にすんでいる人かなと思うようになる。  

話しはかわるが、わたしは食材などを売っているスーパーマーケットに行くのが好きである。
どこの国でも、食料品店はどこでも情報の宝庫であると思う。
スイス・ バーゼルでも市内のMigros, Coop に定期的に良く買い物にいくが、近隣の国のスーパー、フランス・サンルイ(国境から1-2km)のロン・ポアン、ジアン・カ ジノ、ドイツ・バイムアムライン(国境沿い)のスーパー・ビッグなどには良く出 かけていく。
それぞれの国のスーパーに特色があるが、食材などの品揃え、値段などに気をつけてみると、いろいろ面白い発見がある。
フランスは農業国だけあっ て、食肉、野菜、ワイン(赤)が豊富で割安だが、パッキングがスイスほど丁寧で ない。
ドイツはハム・ソーセージの類が豊富で、スイスでは手に入りにくいイタリ ア、スペイン、ポルトガル産のワインの品揃えが多い。
スイスのスーパーは品質こそ悪くないが、その分だけ値段が割高である。
それぞれの良さを比較しながら、購 入するようにしている。  

ペルシャの市場ではないが、日本国内でも関西圏は値段の交渉の余地がある店の比率が高いと聞く。
関西のひとが東京のデパートに来て、「おねーさん、もうすこし、まかりまへんか」などと聞いているシーンもあるようだ。
東京でも、若干の交渉の余地があるところもすくなくないようだ。
ほかの客に聞かれないように、電卓 に表示したり紙に書いて値段をわたすケースが多いようだ。
わたしの以前住んでい た、世田谷の成城・祖師谷地区では成城学園前のスーパーのほうが祖師谷商店街に くらべて、1-2割、割高になっているようだった。
祖師谷の方の商店では八百 屋、魚屋などでばら売りのもの、自分で処理を要するものの値段が安いようであっ た。  

日用品の値段を厳しく比較して安いものを購入しようとするより、金融資産の値上がりにより大きく儲けるほうがより大切と今の日本では考えられているのだろう か?

老齢プログラマの

かつてモノは価格交渉して買うものだと記憶が少し残る世代です。
かつてはお店で「少しまけて」といったことがあります。
今ではすっかりなくなってしまいました。
大型店ができ、定価販売が定着したからでしょうか。

考えてみれば、価格交渉はとてもタイパが悪い販売方法です。
記念品を買うなら良いかもしれない。
しかし、日用品を買うには面倒で仕方がない。
だから日本では廃れたのでしょう。

ネパールに登山旅行した時、旅慣れた友人が上手に価格交渉していました。
ここでは時の流れが違いました。
日本には価格交渉したくなるような時が流れている場がなくなってしまったのでしょうか。

補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。


【ライン随想録】
ライン随想録 ペルシャの市場にて(本記事)
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