ちかごろ・みやこではやるもの 携帯電話
ライン随想録、1997.1.19 井浦幸雄
随想録
約9ヶ月ぶりに、東京に、 一時帰国し、携帯電話の普及ぶりに、いささか驚かされた。
96年には、日本全国で、 年1,600万台も売れたとのことだ。
電車の中でも、道路を歩いていても、建物のなかでも、あちらでピーピー、こちらでピーピーと、せわしないことおびただしい。
スイスや、欧州でも、普及はしてきているが、 東京での急速な普及、 その集中度には、いつものことながらびっくりさせられる。
携帯電話とPHSとでは、違うらしい(どう違うかどなたかおしえてください)。
女子高校生などは、メッセージの出せるポケベルを持っていて、これで割安に、 携帯電話の代替としているそうだ。
大体、普通の人の、月額料金は、 携帯・PHS・ポケベルで、いくらくらいになるのだろうか。
たしかに、セールスのひと、 配送の人、いつも外回りをしている人には、便利に、違いない。
地理が不案内なところを、尋ねていく人、 また、デートなどのまちあわせをする人は、役にたつだろう。
ただ、わたしの、耳にはいる携帯電話の話の内容は、「おかあさん、これから帰りますからね」とか、どうでも良い事が、多いような気もした。
価格破壊とかで、携帯電話は、一台につき、 1円、 というような、値段も電気店で見た。
月額4千円 5千円する基本料金で施設費を取り戻すようだ。
でも、携帯電話の普及はいろいろな問題を引き起こしているらしい。
一つは、 運転中に掛かってきた、携帯電話に気をとられての交通事故である。
スイスなど、 多くのヨーロッパの国々では、運転中の携帯電話使用を法律で、禁止しているようである。
それに、新幹線、電車、駅、劇場、レストランのような、パブリックスペースでの、騒音公害もある。
本来プライベートであるべき、 電話の内容を、聞きたくもないとおもっている、周囲の人々に、大声で聞かせて、なんら、恥じ入らない、無神経なひとがきわめて多い。
本来スイッチオフにすべきところ、忘れたり、わざのとそのままにしておく人が多いようだ。
先日もわたしのスイスのオフィスに尋ねて来た人と、話を始めようとしたときに、 その人あての携帯電話が鳴り、そのひとの電話が別室で終わるまで、 15分も、 まちぼうけを食わされたことがあり、いささか鼻白んだ。
東京のように、 公衆電話のおおいところでは、多くのひとにとって携帯電話は必要ないように思う。
「公衆電話をつかっているひとはダサイ」という、言い方があるようだが、 「自分の考えをしっかり持たず、 周囲に流されて生きていく、いきかたは、もっと、もっと、ダサイ」ように、 思う。
わたしの場合、スイスでも、オフィスにいる時間が多いし、留守録電話 秘書のカバーがあるため、携帯電話は今のところ、必要ないと思う。
また、社内LANで、わたしの、会議予定、昼のビジネスランチの行き先、電話番号など、関係者に週間単位で流してある。
ただし、車で、移動中に、 故障したり、渋滞に巻き込まれて、約束の時間に遅れそうになったときなどは、携帯電話があると便利かな、とも思う。
アムステルダムの空港で、火事のため、トイレのドアがあかなくなった人が、会社に携帯で電話をいれ、間一髪救出されたと、いった話も、あるらしい。
函館のハイジャック事件でも、機内トイレからの通報が、犯人逮捕に役立ったようだ。
また、阪神大震災でも、通常の、電話回線が寸断された折、携帯・PHSが、通信に威力を発揮した事も、聞き及んでいる。
新しい機械は、われわれの生活を便利にするとともに、周囲の人の社会生活に大きな迷惑をも、与える。
携帯電話・新規加入年・1,600万台時代は、 これが定着し、 落ち着くまで、あちこちで摩擦を起こすように思う。
「電話の声が大きいので、周囲の方に、迷惑となっていますよ」 と、大きく書いたメモ用紙をいつも、携帯しておいて、必要に応じ、迷惑をかけている人の、目の前に差し出すのも、良い考えではないかと、いつも思うのだが、どうであろうか。
さらに、雑誌 AERAによれば、 携帯電話を買って設置したものの、 誰からも掛かってこず、不安と焦燥にかられている若いひとも多いと聞く。
フランスなどでは、料金を払って、サービス会社から、携帯電話に1日、数回のテスト送信をしてもらっているひとも、あるという。
わたしなどは、歩いているときまで、電話によびだされるような、生活には、耐えられないような気がする。
何はともあれ、電話に振り回されたり、 そのために、心の平安を乱されるのは、本当に、豊かな生活をしている事になるのだろうか。
老齢プログラマの所感
そう言えば、携帯電話・新規加入が年・1,600万台の時代がありましたね。
モラル上の問題の出始めの頃ですね。
あれからいろいろ経験して、良い・悪いが明確になってきたようです。
運転中のスマホなど、一部が法律上の禁止事項になることが社会的常識になってきました。
今は携帯より普及スピードが速いものがあります。
AIです。
こんなスピードで普及されてはたまらないという意見をよそに、文章だけでなく、画像や、音声や、動画まで使えるようになってきました。
大きな問題は「フェイク」でしょうか。
フェイクニュースは、特に選挙結果を左右する危険が言われました。
米国では同級生のAIが生成したヌード画像まで現れたようです。
当時と同じような、いや当時では考えられなかった問題も起きています。
新しいものが普及する時代はいつもこのような問題が起こるのですね。
補足(訂正あり)
この記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さった。
この記事は住職の息子によって今も公開されています。
しかし、井浦さんの「ライン随想録」が以下に見つかりました。
当時お世話になったことを思い出し、復刻していましたが、やっていたことはnoteへの転写に過ぎないのかもしれません。
しかし、ここから記事へのリンクは途切れています。
(今まではこの理由で検索しても表示されなかったのかもしれません)
当時の記事を読めるようにしているという意味はあるのかもしれません。
しばらくはライン随想録の復刻を続けることにします。
htttp://www.interq.or.jp/tokyo/yiura/rhein/
【ライン随想録】
ライン随想録 ちかごろ・みやこではやるものー携帯電話(本記事)
ライン随想録 ちかごろ・みやこではやるものータマゴッチ
ライン随想録 最後の授業
ライン随想録 海外日本食事情
ライン随想録 荷物なくしたことありませんか
ライン随想録 フランス・リモージュ地域
ライン随想録 駅前・放置自転車
ライン随想録 インターネットと私(その3)ブラウザー
ライン随想録 インターネットと私(その2)電子メール
ライン随想録 インターネットと私(その1)概況
ライン随想録 ヨーデルテープありますか
ライン随想録 危ない目にあったことありますか
ライン随想録 スイス・ドイツ語
ライン随想録 人の行く裏に道あり花の山
ライン随想録 円高はこわくない
ライン随想録 規制緩和本当にお好みですか
ライン随想録 中世都市バーゼルの路面電車
ライン随想録 エジプト旅行と体調
ライン随想録 ごみ処理とリサイクル