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ライン随想録 結婚まえの同居

ライン随想録 1997.2.15 井浦幸雄

コハビタシオン・同棲・同居

先日、職場の若いなかまと列車で一時間ほどのところへ出張に行く機会があった。
ドイツ人のクラウス (仮名) とでもしておこう。
金髪の好青年で30代前半である。
「君は、もう結婚しているのかい?」
「つい最近まで、3年間ほど同棲 (living together) していたひとがいましたが、 別れました。お互いに、うまくやっていけないと、考えたからです。」
「ご両親はその話を知っていたの?」
「もちろん、はじめから話していました。 何度か、両親のところに、 その女のひとを連れていった事があります。」
「ご両親は、何と言っていましたか?」
「別れるまでは、何ともいっていませんでした。 別れると話しましたら、 実は最初から反対であったが言えなかった。おまえには合わないと思っていたから、別れたほうがよかったのではないかと言っていました。」

中央ヨーロッパの国々では、結婚する前に、8-9割のひとが、コハビタシオン・同棲・同居をするらしい。
それほど若くない人も、結婚しないでいて同居しているカプルが周りにたくさんいる。
宗教が違っているため、正式に婚姻しにくい人、離婚どうしであるため、法的に縛られたくない人、いろいろ理由は、 あるようだ。
同居しないでステディーな関係を続けている人もたくさんいる。
これだけ多いとこうした関係に社会的な認知を求めるようになってくる。

たとえば、職場の新年会・ディナーなどには、配偶者も招かれることになっているが、結婚はしておらず、同棲・同居中の相手も配偶者同様に招待してくれという、要求がでてくる。
わたしの職場でも、結局1年以上同一のパートナーと同居しているひとは、連れてきていい事となった。

パーティーなどはカップルで呼ぶ事が多いが、こうした同居中のパートナーをも呼んで差し上げないとごきげんが良くない。

さきほどのクラウスの話のように、両親は息子、娘が一定以上の年になると相手の事で口を差し挟むことはしないようだ。
自分で責任をとれ、ということだろう。
泣きついてきても、取り合わないだろう。
個人が親子の関係でも、確立しているようだ。

若いひとのうち、かなり高い比率で、同棲、同居し、そのうち、8-9割のひとは、そのパートナーと正式に結婚するようだ。
残りの1-2割は、うまく行かずに、ほかのパートナーを探す事になるようだが、これが社会的に、黙認、受け入れられているところが興味深い。

日本でも多かれ少なかれ同様のことになっているのかも知れないが、 多分同居・ 同棲は他人や両親に伏せておくケースが多いのではないだろうか。
長い人生でのパートナー探しは、ふたりのペースが出来上がるまで、 大変なようで、 以上は現実に根差した慣習となっているようだ。

これと同様なことが、 就職さき探しにも、行われている。
アメリカのYP (ヤング・プロフェッショナル) と同じように大学生、大学院生、 が2-3月、半年の契約で、 試しに職場で臨時職員としてはたらくことが良くある。
職場も、 学生もコミットせず、出たり入ったりを何度か繰り返す。
双方が気に入れば正式に、試験をうけて、 採用されることになる。

同棲 同居と同様なんとなく、 宙ぶらりんのような気がするが、よい点もなくはない。
気に入らなければ、就職しても企業からでていってしまうので、試用・臨時期間にじっくりみておくのも、大事なのかも知れない。

「成田・離婚」などが、増えてくると、日本の親も若い人のコハビタシオン・同棲・同居を黙認しなければならない時期がもうすぐそこまできているのかも知れない。

老齢プログラマの所感

「中央ヨーロッパの国々では結婚する前に、8-9割のひとが同棲・同居をするらしい」とは驚きです。
私が若い頃はそんなこと許されないと信じていました。
しかし、今でも日本では公には認められてはいないように思います。
そのうち日本でも認められるようになっていくのでしょうか?

この記事が書かれて27年の歳月が過ぎています。
「同棲している」という話はよく聞きます。
若い人向けのドラマでは普通のことのように描かれています。
しかし「結局1年以上同一のパートナーと同居しているひとは、連れてきていい」という組織はあるような気がしません。

IT技術はとんでもなく進歩しています。
当時はインターネットを使うには難しい時代でした。
高価なプロバイダ料金の支払いに、家族の同意を得るのが難しかった。
今はAIの全盛の時代です。
しかし、少子化が深刻化された今でも、恋愛関係のあり方についてはまだ27年前の欧州並みになっていないように思います。


補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。

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