生命研究の分野では計算上あり得ないことが起きる
初めに
自然界では計算では考えられないことが時々起こるようです。
特に進化生物学の分野です。
理論的にはあり得ないと思うようなことが実際には起きていたりする。
だからでしょうか?
生物学者は生物をあるがままを見ようとします。
体系立った理論的な枠組みは後回しのようです。
進化生物学についての物理学者の思い
物理学者はこの点が気になって、何か言いたくなるようです。
シュレーディンガーの猫で有名なシュレディンガーやα-β-γ理論のガモフは物理学上の大きな貢献をしたのち、進化生物学の論文を書いています。
宇宙物理学者の戸谷先生も生命の起源に関する論文を発表しました。
一般の人にもわかってもらいたいと、このような本を出版されました。
論文中の要点と考える個所です。
「20塩基より短くなければ地球上で生命は生まれる確率は低い」です。
「そのような短いRNAがあっても自己複製活動は期待できない」です。
だけど実際にはあったのです。
進化生物学では
「理論的にはあり得ないことが実際には起きる」が進化生物学です。
計算上あり得ないと考えられることが実際にあるのです。
RNAワールド仮説が有力になったのは、リボザイムが見つかったからです。
トーマス・チェック、シドニー・アルトマンはこの功績により1989年にノーベル化学賞を受賞しました。
しかし、自己複製能力を持つリボザイムは複雑で、原始地球で自然発生したとは考えにくいと戸谷先生は考えたのだと思います。
しかし、市橋先生と水内先生は、複雑なリボザイムではなく、20塩基の簡単な自己複製RNAを見つけました。
これは、マグネシウムイオン濃度が高い環境に数日間さらすという実験環境下で自然に形成されたもので、人工的に作られたものではありません。
このRNAは、2個の10塩基のRNAを連結して自己複製を達成します。
このような簡単なメカニズムは、原始地球の条件下で自然発生する可能性があります。
以上により、RNAワールド仮説は更に有力な仮説になったものと思います。
宇宙物理学者と進化生物学者
どうやら、理系人間にとっても2タイプあるようですね。
友人の元生物学者は物理学的な考え方ができないと言います。
まとめ
戸谷先生は、複雑な自己複製能力を持つリボザイムしか知らなかったので、地球で生命が誕生することが不思議だったようです。
しかし、2年後に市橋先生と水内先生が20塩基の簡単な自己複製RNAを見つけました。
これにより、RNAワールド仮説は更に有力な仮説になったものと思います。
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