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QE2.航海記・その5――幻のグルメ・スコティッシュ・キッパー
97/8/21 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより
随想録
クイーン・エリザベス2世号に乗船し、初めて幻(?)のグルメ・スコットランドの燻製にしん、キッパー(kipper)を味わうことができた。
実は今わたしの勤めている国際決済銀行(BIS)にはイギリス人、わけてもスコットランド から来た人が多い。
さらに、わたしはBIS.ゴルフ・クラブに所属しており、いろいろな泊りがけゴルフ・ツアーに行くのだが、その折、スコットランドの名物グルメの話が良く出る。
おまえは日本人だから、燻製にしんは好むのではないか、ぜひ一度試してみてみろ、と言うわけである。
ロンドンに行ったことはあるが、スコットランドにはいまだ行った事がないので、Kipper なるものに、お目にかかった事はない。
聞くところによると、海岸などで、たき火をし、沈む行く夕日を眺めながら、モルト・ウイスキーの原酒など飲みながら、このKipperを味わうのが最高らしい。
日本では、にしんが消え失せてから久しいので、生のにしんはおろか、燻製のにしんなど、あじわったことはなかった。
QE2に乗船し、最初の朝食のとき、われわれに指定されたPrincess Grill に出かけて、朝食用メニューを眺めていると、“Kipper” と書いてあるではないか。
早速はこれは、“smoked herring"であるかと、きくと「そのとおりだ」と応える。
オレンジ・ジュース、タマゴ、パンに加えて、この”キッパー“なるものを、注文してみた。
独立した皿に出てきた”キッパー“は長さ15cmくらい、頭を取り、三枚におろしたにしんを真ん中の骨の部分は取り除いてある。
あめいろの”キッパー“は軽くあぶってあり、口に含むと、燻製独特の香りと、にしんのこうばしい味がいっぱいに広がる。
なつかしい海のかおりがあたりに立ち込める。
にしんのごく細い骨がのこってはいるが、気になるほどではない。
朝のため、沈みゆく夕日はなかったし、モルト・ウイスキーもでなかったが、なかなか、味わい深い。
7月28、29、30、31日、と毎朝、この“キッパー”なるものを、一皿注文した。
ウエイターも手慣れたもので、向こうから“Kipper,again?"と聞いてくる。
最後の朝の8月1日には、わたしが全部食べたためではなく、上陸の朝で忙しいためであろうが、”キッパー“はメニューから消えていた。
日本人のうち9割以上の人は、この“キッパー”なるもの、口に合うと思う。
イングランドや、スコットランドに行かれたかたは、ぜひ一度おためしになり、感想をお聞かせ願いたいものである。
キッパーは手に入らないものの、生のにしんはわたしのすんでいるバーゼルから程近い、フランスの町、サン・ルイのスーパー、ロン・ポアンで入手できる。
10-15cmくらいのにしんを入手し、自分でワイン・ビネガーとサラダ・オイルでマリネーを作り、なんどか味わった事がある。
黒つぶこしょうを加えると風味が増すようである。
ときに、1500人もの船客のいるQE2では、7つもの指定レストランで、朝、昼、晩と食事を取る事となっている。
わたしどもの指定された、Princess Grill は約40名もの船客が食事をしていたが、最初のころは、二人がけのテーブルから席が埋まっていったが、次第にお互いが親しくなるに連れ、8人がけ、4人がけ、のテーブルに人気がでて、大勢で食事を楽しみたくなる。
ワイン、その他の飲み物をシェアーしたり、会話を楽しんだり、大きなグループで交歓するのが、クルーズ最大の楽しみという事が分かってきた。
レストラン、グリルのことなるお仲間とは、お茶の時間とか、食後のバーでごいっしょする事になるが、こうした施設は随所に設けられていた。
ご参考までに、QE2.Princess Grill の7月31日、ディナーのメニューを以下に掲載しておいた。
このメニューは当然日替わりで、毎日グリルごとに異なり、専属の印刷所で印刷して配布される。
最終日のディナーのときに、各人に毎日のメニューのコピーを手渡してくれるという念の入れ様である。
この標準メニューのほかに、Chefs Suggestion というお勧めメニューがあり、さらにワインリストが添えられている。
各グリルに専属のソムリエが配属されており、ワインを勧めているが、ワインはクルーズの費用には含まれておらず、自己負担である。
以下、関心のないかたは、どうぞ読み飛ばして下さい。
PRINCESS GRILL MENU
(31st July 1997)
HORS D'OEUVRE
Beef Steak Tartar finely minced Fillet Onions,Capers, Anchovies and
Pumpernickel
Grilled Mozzarella with Olive Oil, aged Wine Vinegar, Sun dried
Tomatoes
Spring Rolls with hot Plum Sauce
SOUPS
Consomme with Meat Dumplings, Vegetables and Sherry
Cream of Vegetables and Herbs
Chilled Pina Corada Soup
SORBET
Kiwi Sorbet
ENTREES
Paupiette of Flounder "Americaine"
Zitte Pasta with Roquefort Cheese
Roast Duckling a L'Orange
Grilled Lamb Cutlets
Sauted Medallions of Veal
VEGETARIAN DISH
Panfried and served with a Ragout of mixed Beans and Brown Rice Timbale
DESSERT
Kiwi Sorbets
White Chocolate Brownie with Chocolate Fudge Sauce
Orange Bavorois with tangy Rasberry Sauce
Coffee Souffle with Vanilla Sauce
Diabetic Dessert: Fruit Compote with Diabetic Ice Cream
Ice Cream: Vanilla, Chocolate, Pistachio
Dessert Sauces: Rasberry, Vanilla, Apricot
Assorted International Cheeses
Freshly baked Breads
Chilled Whole Fruit
Beverages
Ceylon and China Tea
Coffee, Decaffenated or Regular, Cappuccino, Espresso
Cunnard serves only 100% Colombian Coffee
Hot Chocolate
Iced Tea, Ice Coffee
老齢プログラマの所感
スコットランドの燻製にしん、スコティッシュ・キッパー(kipper)は食べたことがありません。
名前を聞いたこともありませんでした。
「おまえは日本人だから、燻製にしんは好むのではないか、ぜひ一度試してみてみろ」と井浦さんが言われたので、私も好みだと思います。
機会があったら試してみたいです。
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メニューを見ても良くわからないものもありました。
すぐに想像できない料理はWikipediaなどで調べてみました。
オードブルのSpring Rollsって、調べると「春巻き」と出てきます。
日本語直訳じゃないですか。
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Chilled Pina Corada Soupって、スペイン語で「うらごししたパイナップル」の意味とかで、このような飲み物みたいです。
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SORBETとは、シャーベットのフランス語だそうです。
Kiwi Sorbetはキウィのシャーベットの意味になりますね。
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Paupietteとは肉や魚を薄切りにして野菜などの具材を巻いたフランス料理だそうです。
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Roast Duckling a L'Orangeとはオレンジ風味のロースト鴨だそうです。
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Sauted Medallions of Vealとは、メダル上の子牛のソテーの意味です。
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Coffee Souffleとは、コーヒーのスフレですね。
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補足
上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。
ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。
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