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首都直下地震、企業が従業員から安全配慮義務違反で訴えられるリスク

こんにちはリスクマネージャーの見上です。

今日は首都直下地震が発生し首都圏一帯で大規模停電が起き、各自避難を強いられる状況になった時のリスクを考えます。

東京都防災ホームページには以下の記述があります。
「大地震が発生した後、およそ72時間は、救命救助活動を通じて1人でも多くの命を救うことが最優先となります。そのためには、帰宅困難者の一斉帰宅を抑制し、大渋滞により救急車等が到着できないといった状況を防止することが重要です。」
詳細は東京都防災ホームページを直接ご確認ください。

この記述は
・大地震が起きたらすぐに避難を開始せずに、72時間は「一時滞在施設に留まり、待機いただくこととなります。」と自治体が皆さんの避難行動を抑制する指示を書いています。

72時間待機 5つの疑問

  1. 個人の生命維持行動を自治体が抑止することは憲法違反ではないか?自治体は一定時間経過後治安悪化した街に市民を送り込んで無事に帰宅や目的に到達できると考えてるのか。

  2. 72時間待った後、具体的に避難路が改善する見込みは不明。

  3. 一時待機所にいる72時間の水や食料は提供されるのか?それとも本人が持っている水や食料を使うのか?72時間後水、食料が消費した後でどのように安全避難するのか?

  4. そもそも治安維持できない(110番119番は使えない、携帯電話も繋がらない、監視カメラは記録されない)状態が悪化するまで避難してはいけないのか?

  5. 企業単位で自治体を企業の避難シナリオに含めている場合、企業は安全配慮できない状態で従業員に帰宅命令するのか?その後帰宅までに発生じた死傷者の家族から訴えられるリスクは検討したか?(勝手に帰宅するな、留まれとの業務命令は必ず記録や記憶に残ります)

簡単に5つの疑問を書きましたが「72時間」待てというのは「政府や自治体の重要人物の避難が終わるまで市民は留まれ」とも読み替えできそうにうがってしまいます。

無事に避難するために必要な食料、水、携帯の電池が残っている間に、できるだけ安全を確保できる地域に移動することが優先されるべきです。
1週間程度の停電が見込まれている中、首都中心部被災地の治安は時間の経過とともに悪化することが想定されます。そのような場所に長居は不要です。

治安悪化する場所では移動できる時間には大きな制限が発生します

少しで日が陰り、街に影が出来たり、夜の行動はにかく危険です。日中で人々が動いている中で、できるだけ集団的に行動することが望ましく、途中暴行や強姦、強盗のリスクを低くする行動が必要です。
日が高い間に安心できる場所を確保、集団でとどまれる場所を確認する必要があります。どんどん前に進むことは危険です。
東日本大震災の時、都心から放射状に逃げる人向けの水(ペットボトル500cc)は2,000円/本で売られていました。途中水などをしっかり確保しながら進まなければ、途中、水も食料も入手不可能と考えるべきです。

単独行動や暗部への移動はとても危険

「安い水が買える場所を教える」「こっちに安全な避難所がある」などの甘い誘いは、レイプや強盗に遭遇するとても危険な誘い言葉です。街は停電で監視カメラは動いていません、110番も119番などの緊急通報も使えません。

自治体は補償してくれません

役所や役人は業務上の賠償責任を負わないものです。個人では「あれおかしいぞ」と思っても、つい「組織として作成されたシナリオが優先される」ものです。万が一、死傷者が出ても「想定できなかった」など言い訳をして決して責任は果たしません。

部下へ「留まれ」の指示はとても無責任

治安が悪化し、従業員が安全に帰宅できる保障が失われた状況で、企業が従業員に向かって「72時間帰らずに留まれ」と業務命令することはとても個人の生存権を無視した愚行ですし、そのような状況で会社は個人に指揮・命令を行える理由は無いはずです。

首都直下地震被災時の安全配慮義務とは何か

企業や組織が従業員の健康と安全に配慮する義務がありますが、これは暗黙のうちに社会システムが維持され、従業員が健康と安全が脅かされない事が前提のはずで、従業員の健康と安全に配慮する義務を果たせない状況では、その状況において雇用契約は維持されるか、労使は事前に話し合い、事前に取り決めしておく必要があります。

組合や社員会などで確認を

組合や社員会は会社との議論の中で「首都直下地震発生後72時間待機命令を出すのか」確認すべきです。また会社に対して「治安喪失まで待機しろという業務命令は安全に配慮する義務違反になるのではないか?」と確認してみてください。

会社は治安を失うと判断した時、従業員へ通知すべき


首都直下地震で社会の治安が失われる場合、それは会社の責任ではありません。また会社は社会の治安を維持する能力はありまりません。その約束もできません。
そのため首都直下地震が発生した場合には、会社は従業員に対して
「各自、自己の生命維持を最優先とした行動を取ってください。会社では皆さんの安全を補償することはできません。ここから先は、みなさんの判断で行動してください。」
という内容を弁護士や社労士、必要な労基署と打合せの上、予め就業規則や緊急対応計画、マネージャー教育などに加え、会社と従業員間で合意しておく必要があります。

自治体の言う通りにしただけなのに、業務上死傷罪や従業員家族からの民事請求を受けるリスクを負うのは経営者です。是非考え、会社と従業員にとって、最もリスクが低い方法を検討してください。

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