逆開発
週刊東洋経済の8月5日号を何気なく読んでいたら、ジャーナリストの金田信一郎さんが書いた「小湊鉄道 駅前を森に戻す 時代は逆開発だ!」という記事が飛び込んできた。
記事では千葉県の房総半島を横断する小湊鉄道の労働組合と会社の団体交渉から始まり、「勝手連」と称する地域住民との共同作業(無人駅清掃、草刈り)や里山会議のことが書かれている。
石川社長は銀行員時代に祖父から言われた「君がやっていることは破壊だよ。開発じゃねえよ」という言葉を胸に、小湊鉄道を地域とともに経営している。その方針は「逆開発」。
これまで「開発」という名の下に山間部の駅前をアスファルトで舗装してきた。このアスファルトを剥がして森に戻す。アスファルトを剥がして土が姿を現すと、そこに花や木を植えた。「地域と会社の間に境目をつくらなければ、自然がバランスシートの資産になる。自然を使い倒す」ーーと、金田さんは、小湊鉄道の実例から新しい「開発」の在り方を提起する。
思えば都心でも、銀杏並木やたくさんの樹木を伐採して神宮球場や秩父宮ラグビー場を解体、移転させる事業が問題になっている。都会のオアシスとして人々から親しまれている神宮の森を壊してまで行う開発の必要性がいまだによくわからない。小湊鉄道が実践している自然とつながり自らも生態系の中に組み込まれるような「逆開発」の視点が、求められているのではないかと思えてならない。