値札のないお買い物
食料品を買いに市場に出かけても、工芸品を売るマルシェに足を伸ばしても、生地を洋服の仕立て屋さんに持っていっても、商品やサービスの値段を書いてあるローカルのお店になかなか出会わない。タクシーも乗車前に行先を伝え値段の交渉から始まる。
特に私が生鮮食品を買いに週何回か通っている、ダカール市街中心地にあるケルメル市場は値下げ交渉がしやすい場所かもしれない。
自宅から歩いて数分、アフリカ感満載のお面屋さんをを通り過ぎたところにケルメル市場の建物が構えている。
円形の建物の内部は中心から外側に向かって魚介類、肉類、野菜や果物、スパイスなど売られていて、特にスーパーよりも新鮮な野菜と果物が安価で手に入るのが気に入っている。
野菜と果物はどこを見ても同じようなものが並んでいるが、一応売り手ごとに売る範囲が区切られている。毎回新しい人のもとで買うのも大変なので同じおばちゃんの場所へ直行。
「Bonjour!今日も来てくれたのね、何が欲しい?ほら、今日はオクラがあるよ」と言いながらおすすめの野菜を見せてくれる。欲しいものを私がバケツに入れ終わると、ザッと野菜の種類と数を確認して値段を言ってくる。重さを計る日もあれば目視で終わる日もある。
ケチな私でもなんだかこのタイミングで値切る気になれない。
スーパーで買うより十分状態も良く、通えば通うほどおばちゃんに「マケてよ!」なんて言えなくなった。
自宅近くのフルーツ屋さんでも同じように、気づいたら値段交渉のタイミングを失っていた。
値下げ交渉がない代わりに、買わなかった種類の野菜や果物を帰り際にモリモリっとサービスで渡してくれる日も多く、こちらも気分が良い。
私はこの人たちに会いに行くのが楽しみで、この人たちはちゃんと儲けられて嬉しいからきっとwin-winの関係かな?
仕事で国際協力に携わる夫が言っていた言葉が頭をよぎる:「我々のような者が途上国に住むと、ローカルの方々にお金をちゃんと払ってあげる義務がある」。
私は今のお買い物に不満はないのだから、ローカルの方々のことも考えてこのままでいいじゃないか!
そう納得し値札には書かれない「定価」で娘が大好きなマンダリンオレンジを今日も買い足した。
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