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プレゼンテーションとしての装い『25ans 』(2023年11月号)より
大切な試験がある。重要な会議がある。恋人にプロポーズをする。彼の両親とレストランに行く。もうすぐ新しい会社に入社する。外国人の友人に会う…
そうだ、こんなにもたくさん大切な場面が私を待っている。
でもね、私はあまりにも怖がりなんです。自分に自信がなくて、どんな入念な準備も、精神統一も、私が理想通りに行動できる理由にはならない。
私のようにチキンなあなたのために、この雑誌は少しばかりの戦略を与えてくれるかもしれません。
25ansのコラムの中に次のような言葉を見つけました。
「プレゼンテーションとしての装い」
ミスリンのナチュラルライフ・レポ 愛しい気配Vol.155
良い響きです。
何がいい響きかっておっしゃいましたか?
本来、個人的な決定ごとである「装い」が、目的のための戦略や将来の利益をイメージさせる「プレゼンテーション」という言葉によって形容されることで、一抹の捉え難さを醸し出しているからです。
意味を考えてみましょう。
これはつまり、着る服、身につけるアクセサリーでもって、
自身の考え、その場での存在意義、相手へのメッセージを伝えようということです。
もちろん、このような言葉を使用しないメッセージには限界があります。
相手がその意図を汲むことすらしないかもしれないし、メッセージが正しく伝わらないかもしれない。
しかし一方で、大きなメリットがあります。
それは特にチキンなあなたにぴったりなのです。
なぜなら、そのメッセージは何もしなくても自動的に発信されるからです。
メッセージ性を持たせた服を着るだけ。
伝えたい心配りを託したアクセサリーを身につけるだけ。
あなたはそれらについて解説しなくていいし、
あなたはそれらをよく見せるために踊ったりしなくてもいい。
ただ単にそこに存在していればいいのです。
私のお気に入りの作品から例をひとつ挙げましょう。17世紀フランスの文学作品『クレーヴの奥方』からの引用です。
貴族の子弟たちは、その日のために必要なものを調達しようと従者に指示することに忙しかった。皆、煌びやかな姿を見せよう、そして自身の頭文字や紋章の中に愛するひとへの秘めたるメッセージを織り込もうと心を砕いていたのだ。
永田千奈訳、光文社(2016)
p.139
相手を連想させる何かを、自身の衣装に取り込むことで、「わたしはあなたを想っています」と伝えているのですね。
クレーヴ夫人はまだ気持ちが沈みがちだったが、いつになく美しく装うことで、誰にも、特にヌムール公には心のうちを悟られないようにしていた。
驚くことに、お洋服には本心を隠す役割を託すこともできるのです。
それはまさに、私たちが言葉によって本当の気持ちを隠すことや、皮肉を使って本当の意図をわかりにくくすることと同じです。
王は白と黒の装束を身につけていた。これは寡婦であるヴァランチノア夫人を象徴する色であり、王はいつもこの色を選ぶのだった…
ギーズ公は、緋色と白の取り合わせだ。当初、人々は彼がなぜこの色を選んだのかはわからなかった。だが、誰かがふと、それは彼が昔、愛した女性を象徴する色であることを思い出した。その女性はすでに結婚しており、ギーズ公はあえて想いを表に出そうとはしないが、きっと今でもその方に思慕の情を抱いているのだろう。
こちらでも、愛する人を象徴する色を自分のファッションに取り込むことで、想いを表しています。
またこれからの文章からは、女性たちが自分を象徴する色を持っていることもわかりますね。
この作品は歴史小説の側面を持つものであり、当時のフランスの宮廷では、「プレゼンテーションとしての装い」が日常使いされていたようです。
最後に装いについての名言を紹介して終わりにしようと思います。
美しさは女の武器であり、装いは女の知恵。そして謙虚さとはエレガンスのことよ
新境地を開いた女の人生を輝かす30の言葉。N°28
https://www.vogue.co.jp/celebrity/quoteme/2017-08-19
知恵を使って装いを整えることで美しくなり、そしてそれは、不安気味なあなたを支える非言語の武器になるでしょう。