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『さわおさん』と『賢治先生』1

the pillows が解散した。
2/1の発表後、約10日間、巨大な嵐の中にいた。

情緒は平常心と混乱の繰り返しで、まるでジェットコースター。

じぶんの涙腺がぶっ壊れた水道管みたいになり、

どういう感情なのかじぶんでもわからないまま、ボロボロと涙が溢れ続けた。

昼夜泣き続け、目が覚めてもすぐ涙が溢れ始めて、夜までさんざん泣き疲れて、ちょっとずつ寝た。


あんなに慣れ親しんだ曲達を聴くのが、

怖くてたまらない、

ひたすらXに抑えきれない言葉を吐露して、BUSTERSの投稿する言葉をリロードで追い続けていた。

ありがとうって言うのさえ、ツラかった。


予感してたし、発表を見たときは秒で納得したはずだったんだ。


「基本的には曲とライブだけ、で繋がってるのが理想!友達じゃねーんだから。」

生意気なBUSTERSとして、そういうプライドがあったつもりだけど、
ぜんぜんそんな事なかったって、思い知らされちゃった。笑っちゃう。

みっともないくらいショックを喰らった。

ここ数年感じていたけど言葉にはしてこなかった悲しい予感とか、長年こじらせ気味の愛着とか、時々チラついてた違和感とか、
発表を見た途端に、どばーーってせきを切って流れ出して、溜まっていた膿がぐちゃぐちゃ出てきた感じだった。

めっちゃノーセルフコントロールで、なりふり構ってられなくて、
訳わかんないくらいツラくて、

じぶんでもびっくりした。


 結局、個人的な思い出話にしかならないんだけど、わたしも出会いから話してみたい。

残された側の気持ちの整理ってそういうことだよね。
はぁ、葬式みたいじゃーん?でも書いちゃうよ。

 高校入学してすぐ、元々、本が好きだったから国語の教科書を読み物として読んでたのね。

宮沢賢治の「永訣の朝」が載ってて、初見でボロ泣きした。

衝撃を受けた。

※永訣の朝は作家の宮沢賢治が、人生で唯一の「理解者」だった妹のトシを病で失う喪失を描いた詩です。


高1のクラスでは完全に友達が出来なかった。
気の合う人、ひとりも居なかった。

つまらないので図書室に入り浸り、ちくま文庫版(←ここが既にマニアック)の宮沢賢治全集を読み漁っていた。


部活はせずに帰宅部。

余計友達なんかできない。

家に帰るとすぐラジオをつけていた。

ラジオは既に好きだったから、音楽は割と聴いていた。ロックミュージックはまだ、意識していなかったけど。

当時1996年。FMから月間おすすめの曲として、この年6月に発売した「ストレンジカメレオン」が繰り返し流れていた。


『地味だけど、きれいな曲だなあ』って、

聴いてるうちにだんだん好きになった。

シングルバージョンだったから、派手さは控えめだったね。そこも好きだったよ。
シングルverのイントロ、今でもすき。

歌詞の世界観も、すごく気に入った。
特に最後に

♪あぁ 君と出会えて良かったな

ByeBye 僕は ストレンジカメレオン


…って、
 えっ 〆で別れちゃうの?!

ってところがものすごーく、好きだった。

このオチのパターンが、わたしは本当にとにかくめっちゃ、ツボなんである。

賢治の「青森挽歌」「銀河鉄道の夜」もそう。

「ストレンジカメレオン」も「ジョニーストロボ」もそう。「Ninny」だってそう。


運命の人(理解者)に出会えても、結局、ひとり。

永遠に完全に一つにはなれない。

だけど、【価値がある夜】。


「スケアクロウ」のMVのオチもそうだと思ってる。

好きだけど、めっちゃコェーよ。

これを創ったヒトは、残酷だなって思う。

優しいのにどこか絶望的にドライに冷めていて、血も涙もない様な、諦念がある。

だけどそういうの、大好き。


賢治の「青森挽歌」もとても美しい詩なのに、

最後の方でとつぜん最愛の妹の、死に際を妙に冷静かつ生々しくレポートしだしたりして、

コワイんだよね。

そこが好き。



友達いないし、無理につくるのもムリだったし、読書とラジオにのめり込んでいた。

あとは、たくさん絵を描いていた。

学校も家もつまらなかったけど、寂しくはなかった。

孤独を理解してたから。

当時ハマり過ぎて賢治の「青森挽歌」と

ピロウズの「Swanky Street」をノートに何度も写経していた(笑)。


ストレンジカメレオンで出会って、

カセットテープに録ったのを何度も聴きながら数ヶ月過ごしたら、アルバムの「Please Mr.Lostman」が発売された。

ドキドキしながら買った。

むちゃくちゃ良かった。全曲大好きだ!


メロディも、声も、歌詞も。

そして今まで聴いたことのない質感の、

サウンドの透明感と、奥深い重なり具合に、

うっとりと心酔した。

それはバンドサウンドってやつなんだって、後に理解する。

こんな音楽があるなんて。


きれいで、繊細で、でも危うい凶暴さも含んでいて、とても好みだった。


しみじみ聴き入っていた。


ちょっと遅れて、TVに映っていた「ストレンジカメレオン」のMVを観た。

この時は、しみじみなんてもんじゃなくて、

脳みそをぶち抜かれるような衝撃があった。


『こ・れ・だ!!!』


そう思った。

精神病院の独房を思わせるモノトーンの部屋に、顔のない人形を抱えた、どこか少年性を感じさせる佇まいのヒト…。

白いパジャマ、最高じゃん。

パントマイムみたいな動きが奇妙で危なっかしい。
でも、なんかその気持ちが、めっちゃわかる気がする。

完全にわたしが求めてたやつだった。

ここで完全に、わたしの
【Homme fatal〜オム・ファタール】のイメージが脳と心に焼き付いた。

それが、『さわおさん』、だった。

この刷り込みは、一生ものだった。

アルバムを気に入ってしばらくした頃、

NHK-FMの貴ちゃんのラジオに、

ゲストでピロウズの人が出るって知った。

「へぇ、どんな人なのかな?」

ゲストインタビューのコーナーが始まって、

ゲストの方が自己紹介した。

「ザ・ピロウズの山中さわおです」。

へえ、さわおさん…。

珍しい名前だけど、とってもいい名前だな。

何だか、その名の響きに、きゅんとした。


おしゃべりする地声の柔らかい質感、どことなくナイーブな話し方も、言葉選びもとても品が良くて、とてつもなく素敵だ〜!!!

声のインタビューを聴くうちに、ぼんやりしてたピントがだんだん合うように、

『さわおさん』のイメージが立体的になってきた。

「曲も素敵だけど、作ってるヒトもとっても素敵なんだ!!」

いたく感動していた。

元々わたしには相貌失認という特性があり、なかなか人の顔や表情を覚えられなかったり、認識できないんだけど(これ、けっこう困るんだよね)

ここらでようやく、最初はPeeちゃんと見分けがつかなかった、さわおさんの顔も覚えることが出来た。

すごくいい眼をしている。

すごくカッコいい人だ。

すっかりファンになった。


そこからは、新曲のシングルがどんどん出るのを追いかけて、次のアルバムが出るのを心待ちにした。


「ハイブリッドレインボウ」のシングルで初めてさわおさんのシャウトを聴いた時の興奮ったらなかった。

音だってイントロから、ものすごく特別な曲だって解った。

アルバム「LITTLE BUSTERS」はものすごく前のめりに聴き込んだ。

わたしも小さな、BUSTERSなんだ。
そう思うと、誇らしかった。
ブルースドライブモンスターの息づかいと鼓動が、サウンドの向こうから聴こえると思った。

アナザーモーニング、最高。
ブラックシープ、こういうの好き〜。
THAT HOUSEの入れ子構造のアイデア、天才か?!

この頃にはすっかりロックミュージックの虜になっていた。

TVで深夜にちょっとだけ流れるMVを必死にチェックして、撮りためて、繰り返し観て、
クラクラしていた。


CDプレイヤーを抱え込むようにして聴き入り、
ギターソロだけ、イントロだけ、夢中になって、何回も巻き戻して狂ったように聴き返したりもしていた。

「like a lovesong」のギターソロとかね。堪らなかった。ねえpeeちゃん。


この頃には、メンバー3人のキャラクターも認識してた。


歌詞が「何を言ってるか、わかる。」と感じていたし、言葉の力が、演奏の効果で何百倍にも膨らむのを実感した。最高!マジでぜんぶ最高!


ようやく『ライブに行こう』って思った。

大人しいキャラで陰気で引きこもりがちだったわたしは、ライブハウスがとっても遠い世界だと思ってた。

でももうそんな事、言ってらんないぜ!


でも、やっぱりビビっていて、

ようやくライブに行けたのは、

「RUNNERS HIGH」のツアーからだった。

ベースがCDで慣れ親しんだ鹿島さんじゃないのが、ちょっと残念に思ってた(笑)。

そこからは、アルバムとツアー参戦はセットになった。

臆病者でコミュ障で、極端に世間知らずで、行動範囲が狭かったわたしが、

『東京へひとり旅をする』と決めたのは、10周年916のファンクラブイベントへ、どうしても、行きたいからだった。
(ハッピービバークが出た頃だった)

人生初、ライブ遠征。

自分にとっては大冒険だったんだよなあ。

その後、のちのち旅がじぶんのライフワークになるなんて、知らなかったよ。

不安だけど

ひとりでも行く!!と強く思ったし、

ピロウズのライブに東京までついてきてくれる友達は、いなかったから(笑)。

でもそう言えば、高校では2年生から友達が出来たんだ。美術部に入って気が合う人と出会えたのと、更にその友達を紹介してもらって、音楽に興味がありそうだったから、
ピロウズをすすめたりしたな。

ある友達はハマってはくれないけど、話しをたくさん聴いてくれたり、ある友達はちょっとハマって、ライブに何度か付き合ってくれたりした。
ロックを聴かない人でも、わたしの友達はとにかくわたしが『ピロウズが大好き』ということは認識している。

大事すぎて、言うのは恥ずかしいくらいなんだけど、大体、好きがダダ漏れしているらしい。

ピロウズの音楽に、何を感じてるか、メンバー3人がどんなにカッコいいか。
特に『さわおさん』がどんなに音楽的天才で、魅力的な人柄なのか。

気持ちが収まらないから、ルーズリーフに手紙を書いて友達に無理やり読ませていた。

読んでくれた友達、ありがとうね(笑)。
今もつながってくれているんだよね。

そっからは本当に怒涛のピロウズ第3期の黄金期で、リアタイで追うのは楽しくて仕方なかった。

ライブハウスにもすっかり慣れた。

味をしめて、遠征だって何度もした。

同時期にわたしが特別ハマっていたのは、トモフスキー、L⇔R、堂島孝平、あたり。
他にフラワーカンパニーズや、ミッシェル、コレクターズやゆらゆら帝国等も大好きだったけど、

どっちかというと、ポップな、きれいな、ちょっと可愛げのある、でもマニアを唸らせるようなひねりが効いてる、そういう音楽がより好みだった。
スピッツも良く聴いていた。

別ルートで佐野元春さんも良いなと思ってたから、さわおさんにつながってると知った時は、嬉しかった。やっぱり洒落ているぜ!

だけどとにかく、
ダントツでピロウズのセンスは
わたしにフィットした。


とてもしっくり来たんだ。


クセのあるキャラクターとして認知されてる
さわおさんだけど、
わたしは変な人だって思った事は、
今までだって、一度もないんだよ。

何に怒ってるのか、わかるし、

理屈は通ってるし。

すごく丁寧に気遣いしてるし

真面目だし、プロフェッショナルだし、
ぜーんぜん、変じゃない。そうでしょ?


だから、よけいわたしはじぶん自身が変人だって事にも気づくのが遅れた気がする(笑)。


割と最初に「正解」を見つけちゃったからね。


2へ、つづく

…………………

ここまで読んでくれた方、ねえ良かったら1杯、奢ってくれないかい?
何も小銭が欲しいわけじゃないよ。ただ、もしちょっと共感してくれたなら、BUSTERSの同志としてカンパイしたいんだよねー。
そんな気持ちをちょっと確かめる方法が欲しいだけ。

ドリンク代1杯600円、どうかな。
投げ銭で2杯でもいいよ(笑)。
待ってまーす。

読んだらコメントもぜひ、くださいね。

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