連載新章
南信州新聞連載作品「満洲-お国を何百里-」も、いよいよ佳境に迫ります。
オムニバスで満洲映画を綴りましたが、本編中、唯一と云っていい部分に切り込みました。その唯一とは……1945年8月8日以降に触れること。
満洲映画の真骨頂は、悲しいかな、そのときが光彩を放つのです。
五族共栄を体現した場所こそ、虚飾のキネマ世界だったというのは皮肉な話ですが、後世への人材遺産をつないだのも満洲映画。
8月8日以前の日常を描くことこそテーマなのに、この回だけは、自らの掟を破った。心して破ったのです。
だから、新章は再び原点に戻ります。
満洲の市井の営み。この傀儡国家とされる不思議の国の住民は、日本人だけではない。実はロシアからソビエトへと変わったことで、居場所を失った者も流れている。
南満州鉄道の伝説的な超特急「あじあ号」。
今回はウェイトレスのロシア人女性を取り上げる。
実際、あじあ号の食堂車ではロシア人ウェイトレスが働いていたというが、本編の登場人物は架空の人物です。若いロシア人女性は、人種的なこともあるけど、雪の妖精のように透きとおった綺麗な存在だったことでしょうね。
満洲で生きていくのも、彼らはきっと、必死だったと思います。