見出し画像

ジャパニーズサムライのこの先

真田広之の快挙は、日本の時代劇をさらに世界エンタメに押し上げたものと思う。

こういう、世界にジャパニーズサムライを浸透させる契機は、黒沢映画から折々訪れている気がするが、本当の意味で、こんなに細かいところまでこだわっている点を評価されるのは、稀なることだ。

「七人の侍」

この作品で、西部劇がリメイクしたり、ジェダイやライトサーベルにアレンジされたことは知られている。

足元をよく見てくれ。
この30年、日本の時代劇はどうなった?
小道具やロケに金がかかるからと、縮小方向となった。いや、絶滅危惧種といってよい。NHKが維持し、松竹や太秦と繋がっている専門チャンネルが延命しフジテレビがこっそり放送する程度で、いくら国民的番組だと自画自賛したところで「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「大岡越前」「銭形平次」といった長寿番組は民放から姿を消した。
小道具を作る、修理する、維持する。そんな職人たちも、高齢化で消え去ろうとしている。

世界が評価すると、馬鹿みたいに再評価してあれもこれもと過剰に反応し、喉元過ぎて熱さを忘れるのが日本だ。

「ラストサムライ」

これがヒットしたことで、世界になんちゃってサムライブームが起きた気がする。鉄砲玉くらって平然とするサムライはこの世にはおりません。
この作品にも真田広之が出演しているが、このことへの内心穏やかならざる何かが、「SHOGUN」への原動力になったと思う。

チャンバラは、ロックだ!

そういう印象もある。今や、それが分かり易い。だからロックなBGMの時代劇も増えた。
元々、しっかりとした制作と原作ベースに乗って、ロックな映像が生み出されたのが70年代。「戦国自衛隊」や「魔界転生」など、当時の角川映画が牽引した。BGMにNOBODYをぶち込んでエンタメにしたのが「里見八犬伝」。それでも、CG使わずちゃんと制作していた。面白いことに、全部、真田広之が出演している。

映画始まって、いきなりこの歌が流れだしたときは、ぶったまげた!

この先、ジャパニーズサムライはどうなるのだろう。

NHKの「明鏡止水」などで、武術などが紹介される。しかし日本人よりも外国からの人がこの実用性を注目し、習得のため来日する。日本人よりも「武の心」を理解する人々が増えている。
戸隠流忍法を軸に、さまざまな古武術を取り入れた初見流忍術は、看護師や介護士、さらには女性の護身など、相手を傷つける目的ではなく「自分と相手の身を守る」ことを前提に求める者が多い。むろん、現役の兵士が自国の利となる術を求める場合もある。
日本人よりも、熱心に、だ。

時代劇がアメリカで本家を名乗るときが、数十年後にやってくるのかも知れない。ショー・コスギや千葉真一の撒いた種が日本ではない場所で開花すると、目先の利で茶の間から時代劇を消し去った日本のテレビ局に勝ち目はないだろう。

こういういぶし銀の外国産時代劇を、制作するより買った方が安いと、地に堕ちることだけはないことを、心より祈る。

しかし、真田広之はいい仕事を重ねてきたのだなと、つくづく感心する。
大河ドラマ「太平記」が今でも高評価なのは、本当に身体を駆使して嘘のない武士の動きを体現しているからだろう。原作ファンも、あの尊氏なら納得で満足だし、あれ以上のものはもう誕生しないだろうと思う。

ジャッキーとも共演してるし、もう、無敵だな