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刀剣と槍

刀剣ブーム、まだ続いておりますでしょうか。歴史女子、歴女もブームでしたが、今は往年の面影もございません。刀剣も、好きで居合や流派に入門されるツワモノならいざ知らず、ただ2次元だけでは長くは続きますまい。
ところで戦国乱世において、刀を武器にすることは考えられず、主要兵器は弓と槍だったとされます。特に弓は殺傷能力ナンバーワン、鉄砲や大筒のように金も要さない武器でした。そして槍は白兵戦でもっとも必要な兵器。長ければ長いほど、安全圏から敵を攻撃できたとされます。これだけの文面だと、物干し竿みたいなものでいいのかなという、武骨で不愛想な棒切れという印象が思い浮かびます。それでは刀剣女子に響く筈がない。
今回、着目するのは、刀剣のように美しい槍の世界です。
槍の重要な概念は、打撃力、破壊力です。それに加えた切れ味と造形美が加われば、刀剣女子の好みとと一致するのです。
ところで槍の重さは、どれくらいなのでしょうね。重いものをドラマやゲームのように、ぶんぶんと振り回して、投げたり突いたりするのは、相当な筋力を必要とします。刀剣の場合は平均して太刀が1.5㎏、それを振りぬくための握力と筋力を鍛える必要があります。娯楽映像でおなじみの上様や流浪人のように、片手で軽やかに振り回すことは(ほぼ)無理です。槍はもっと重い。参考として薙刀は約5㎏、6mくらいの長柄槍で約5.6㎏なのだそうです。さらに華美で波紋の美しい名槍と呼ばれるものは、どうだったのでしょう。全部挙げると大変なので、今回は結城家の名槍・御手杵を取り上げてみます。
御手杵は結城秀康(徳川家康次男)の養父・結城晴朝の愛用槍。
穂(刃)が1.3m、柄を合わせて4.2m。重さはなんと、22.5㎏になります。その穂を収める鞘の部分に黒熊毛を使用し、遠くからみるだけでも威圧感が凄まじかったでしょう。本当にこれを戦場で用いていたとしたら、漫画の前田慶次も真っ青な、とんでもない重量になると思います。 
この美しい槍、レプリカが結城蔵美術館で展示されておりました。本物は東京大空襲で焼失し、現存しておりません。結城は「歴史研究659号・結城一族の謎」寄稿文で紹介したとおり、実は夢酔のファミリーヒストリーで比較的近い場所です。ゆえに愛着もございます。この御手杵は収蔵品ですので、見学はしましたが撮影や掲載の許可を得ていないため、ここでの紹介が出来ません。しかし、一見の値打ちはございます。
穂(刃)が1.3m。野太刀でも刃長は90㎝くらいとされるから、刀剣よりも長いことになります。刀には柄に収まる茎の部分があるから、この御手杵も当然それがある。刀身という共通の鑑賞ポイントだけでも、刀剣女子を十分に魅了することと思います。
あまり詳しくはありませんが、「刀剣乱舞ONLINE」では擬人化された美男子になっているようで、もはや刀剣女子のなかには、もうすっかり槍も認知したうえで愛好家になっておられる方もいるのでしょう。
福岡の民謡・黒田節。槍を片手の華麗なる舞ですが、その原点となる槍は御手絹とともに日本三名槍とされる日本号。全長3.2m、総重量2.8キロ。
これで踊りを舞ったという逸話はございませんので、あしからず。
 
 
【参考資料】
〇結城蔵美術館         茨城県結城市大字結城1330
〇刀剣画法 山鳥毛と一文字派  ホビージャパン・刊


この話題は「歴史研究」寄稿の一部であるが、採用されていないので、ここで拾い上げた。戎光祥社に変わってからは年に一度の掲載があるかないかになってしまったので、いよいよ未掲載文が溜まる一方。
勿体ないから、小出しでnoteに使おう。
暫くはネタに困らないな。
「歴史研究」は、もう別のものになってしまったから。