いまだから云える「頼朝伝」
連載がはじまった日は、源頼朝が竜島へ上陸した日。
房日新聞は、ちゃんと狙ってくれたんです。
安房国とりわけ鋸南では、頼朝人気です。
いつもお世話になることの多い鋸南に恩返しを……「頼朝伝」はそういうつもりでした。連載とは別に、どんどん皆様の中に入っていこう。そういうことも考察していたんです。
偉そうなこと云ってるけど、あんなことがあったって、房総の人は強かった。しかし、日常に戻るまで時間がかかりすぎた。その間、連絡が取れず心配だったし、新聞はとても小説なんぞに割く余裕はなかった。再開されるまで、正直落ち着かなかった。
「頼朝伝」が単行本になったとき、連載時に描き切れなかった後日譚を追記したのは、
安房に回帰できるオチ
を模索した果てのことでした。
その後、本にもならぬ外伝を房日で連載しましたが、伝えたいことが空回りしていた気がします。
それくらい、台風で己を見失っていたと思う。
醍醐新兵衛と菱川師宣というWキャストにしたのも、鋸南へもう一度向き合いたい気持ちありきのこと。ただ、思いは押しつけたらアカンものです。皆様の声が聞こえないのは、ご当地でないが故のハンデ。
まだ連載内容は、長い序章の折り返し、本編前のこと。
「頼朝伝」で出来なかったことを出来たら、嬉しい。そのためにも皆様に寄り添えたらと思う、今日この頃です。