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《物思う頃》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~八十五の歌~

《物思う頃》原作:俊恵法師
夜、一人はあかんな。
酒飲んでも、本読んでも、テレビ見ても……夜が長いがな。終わらん。
けど、オマエと二人やと、それこそ、あっという間や。
閨に横になったと思うと、もう、朝や。
そんな時を思い出して今も待ってるんやで。
あぁぁ……栄養ドリンク欲しい!
にんにくの入った蝮エキス、ヤモリの黒焼き欲しい!

<承前八十四の歌>
式子と定家は階を登り、邸の内に入った。
定家は女房達の眼が届かない室内の闇に紛れると
式子を抱きしめた。
「夜もすがら 物思ふ頃は 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり」
定家が囁くと、式子は猫の目をして薄く笑う。
「朝の光に安らかな眠りを届けまするか? ならば、式子は定家様に抱かれ狂おしい悦びの天に果てなくてはなりませぬ」
「寝屋の隙間は閉じて居りまする故……誰も窺う事はかないませぬ」
定家は式子の手を取り、奥の部屋に誘った。
<後続八十六の歌>         


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