鬱病、先輩にあしらわれる
かれこれ5年近く仲良くさせてもらっている6歳上の異性の先輩がいる。先輩は私情抜きでもかなり美形だし、待ち合わせ場所から無邪気に手を振る先輩に小走りで近づく時は、他人事のように「この人スタイルええな、足長っ!」と思う。5年前から既に年齢不詳気味だったが、年々若返っていて私との見た目の年齢差が縮まっていくように感じる。そんな美魔女じみた先輩に初めて会ったのは、共通の帰国子女の知人に誘われたホームパーティーだった。偏見帰国子女あるあるだが、帰国子女主催のパーティーは友人のパートナーとか、友人の友人みたいな絶対に知らない人が紛れ込んでいる。今回の場合も例に漏れない形で先輩と私が出会った。自己紹介の段階では色々恵まれてる人特有の余裕と自信が見てとれたので、この人と連絡先を交換することはないだろうと思って適当にその場をやり過ごしていた。しかし、なんだかんだで今やサシ飲みは勿論のこと、一緒にパドックの馬を眺めながら3連単を微調整する関係性である。確か、”失恋したらスピッツの楓を聴く”という共通点を見出してしまった瞬間から一気に仲良くなった気がする。
私のことを「予測できないことを言い出すから面白い」の理由で気に入ってくれる先輩。しかし、知り合ったばかりの時にアホのふりをして先輩に貯金額を聞いてみたら、お気に入りのおもちゃを自慢する子どものようにえげつない額を公開してくれたのでむしろこちらが「そういうのあんまり人に聞かれても言わない方がいいですよ」と真顔で注意した。そして睡眠導入bgmは包丁を研ぐ音であり、毎晩欠かさずに流しているらしい。空気を読める私は「山姥じゃないですか!」というツッコミは流石にしなかった。しかしそもそもどういうYouTubeを見ていたら、包丁研ぎASMRに辿り着くのだ?予測できないのはあなたの方じゃないですかと言うと照れながら微笑んでいた。私は褒めていないので照れる意味がわからない。人のことは言えないが、先輩もかなり変な人だ。
えげつなく仕事をこなし、豪快に稼ぎ、ガンガン奢ってくれるのに持ち前のツッコミどころの多さで愛嬌がある先輩と飲むのは楽しい。先輩の悩みは相手が何を考えているか全てわかるからコミュニケーションが楽しくないことと、努力すれば何でも結果が伴うから何でもすぐ飽きることだそうだ。天才には天才の辛さがあるのだろうが、悩みを凡人に打ち明けてくれると自分が信頼されてると勘違いしてしまいそうになる。
先日初めて「いつも奢ってもらってばかりなので偶には奢らせてください!」と勇気を出して申し出てみた。自死願望がMAXになっている私は、この世からいなくなる前に、先輩にちゃんとお礼を伝えておきたいと思ったからだ。義理堅さの裏に私の下心を見透かしたのかどうかわからないが、「別にそんなに奢った感覚ないからいいよ〜笑」と呆気なく流された。計算したら青ざめるほどの結構な金額を奢ってもらってきたのに、先輩にとっては雀の涙なんかいと経済力の差もしっかりと見せつけられた。相手は手強い。
果たして先輩に奢ることができるのか?
明日も自分に優しくできますように。
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