サンライズ出雲 | 寝台列車 #エッセイ
今年のお盆は少し長めに帰省をしていた。
ところどころ寄り道をしながら、その土地にいる友人と会って、お酒を飲んだりしつつ、ゆったりと地元への帰路を楽しんだ。
地元で久しぶりに会った友人が結婚していたり、家を買っていたりと、
なかなか驚くことも多かった。
それでも、会って10分もすると昔のように話せる友人の存在を貴重に思う。
あっという間に東京に戻る日がやってきた。
しかし、今回の帰都(あってる?)は一味違う。
日本で唯一残された寝台列車である「サンライズ」に乗って戻るという楽しみが待っていた。
東京に戻る日のちょうど1ヶ月前、僕はPCの前に張り付いていた。
緊急で入った仕事に対応しているといつの間にか販売開始時刻を過ぎており、何とかギリギリチケットを買うことができた。
お盆周辺の混雑する時期ということもあり、大変な競争倍率だった・・・。
ともあれ、なんとか「B寝台シングル」を予約することができた。
そこからあっという間に1ヶ月が経ち、ついにその日がやってきた。
今回は途中の乗車駅である岡山駅からサンライズに乗り込んだ。
もう終電にも近いような時間に、しらふで駅のホームにいるということ自体がなんだか不思議だった。
駅の構内にある売店で旅のお供のお酒とおつまみを買い込み、いざ乗車。
湾曲した線路の先から、やや丸みを帯びた乳白色の列車が駅のホームに入り込んでくる。
目の前を通り過ぎる車両にはそれぞれの「シングル」の部屋の様子が映る。
カーテンを閉めている部屋、眠そうな顔の子供、窓際に置かれたお酒・・・
ショーケースのように並んだ見慣れない光景を見ながらいよいよだと思う。
乗り込むと、車内は静まり返っていて、通路は思っていたよりも狭い。
自分の部屋を探して歩いている時にどうしようもなくワクワクが止まらなかった。
こんなにワクワクするのはいつ以来だろう?
シングルの部屋はこぢんまりとしていて、カプセルホテルに近いなと思った。
それでいて密室感は強く、秘密基地のようで楽しい。
自分の荷物を置き、パジャマに着替えているとサンライズの連結作業が終わり、静かに寝台列車が走り出した。
ちなみにサンライズにはシャワーがついているのだけど、乗車後にシャワーチケットのようなものを買う必要がある。
一度に積載できる水量に上限があるので、始発駅以外でチケットを手に入れるのは大変シビアであると事前リサーチでわかっていたので、事前にネットカフェでシャワーを浴びていた。
夜の街をいく列車から覗く景色は、言葉にできないほど素晴らしかった。
岡山駅を出てから徐々に建物の数は少なくなり、山間部に入っていくと、民家の灯りもだんだんと消えていく。
その日はちょうど満月に近く、それだけが列車に入り込む光だった。
あっという間に過ぎていく風景とそれを照らす月明かり。
それらを見ながら駅で買ったお酒とおつまみを交互に口にする。
思い出すだけでお酒が欲しくなる。
窓から覗く風景がいつの間にか海に変わっていて、神戸に近づいていることを知る。
新幹線や飛行機で移動しているとあっという間すぎて、そこが地続きであることすら忘れてしまうけど、たしかに街と街がつながっているんだなぁということを静かに実感する。
移動中はずっと、YouTubeやインスタにあがっているTOMOOの弾き語りを繰り返し聴いていた。
どことなく物悲しい歌声が、流れていく風景に溶けていく。
どこから来て、どこに向かっていくんだろうー
みたいなことをぼんやり考えているといつの間にか眠りに落ちていた。
今度はもっと寝溜めてから乗り込みたいと思いつつ、非常に満足度の高い初寝台列車だった。
次からも帰省とかで積極的に利用していきたいと思う、予約頑張ろう。