おさなごころに|おんぶにだっこ(さくらももこ)
さくらももこさんのエッセイ。
とってもユーモラスで、エッジが立っていて、暖かい、そんな物語たちが大好きだ。
今回読んだのは、さくらさんの幼年期から小学校に上がるまでのエピソードを描いた「おんぶにだっこ」。
驚いたのは、子どもの頃の記憶や、その記憶に紐づく感覚をこんなにも鮮明に覚えているということ。
読み進めるうちに、自分自身も成長する過程で感じた不安や悩みをひさしぶりに思い出すことができた。
思えば、子どもの頃は不安だらけだった。
目の前で起こることに過剰に反応し、慌てふためき、場合によっては隠し通そうと知恵を働かせる。
その場はなんとか凌げるが、今度は罪悪感との戦いで眠れない夜が始まる。
今から思うと「そんなこと」でしかないんだけど、当時は大問題。
四苦八苦する日々の中で、少しずつこの世界に順応していくんだったなと思い出される。
そっと肩を叩いて悩みの原因を、この世界のルールのようなものを伝えてあげたい。
「だから、大丈夫」だと言ってあげたい。
まあ、今も内容は違えど悩みは耐えないんだから、数十年後の自分から見ると、今の悩みも笑えるんだろう。
脱線するが、
「あなたの悩みは宇宙からみるとちっぽけだから大丈夫」という論には昔から納得がいかない。
確かに自分が抱えている悩みは宇宙と比べると小さいものだ。
しかし、その悩みと向き合って、対処すべきなのは結局、同じくらいちっぽけな自分自身なんだ。宇宙が勝手に解決してくれるわけじゃないし、宇宙の視点で物事を見ることなんて僕にはできない。
話をエッセイに戻す。
本書は他のエッセイと比較しても、なんとなく悲壮感の色が強く出ているように感じた。
だけど、良いも悪いもない、無邪気な目を通して世界を見るということを思い出させてくれる、とても大切な一冊であった。