【読書記録#21】筒井康隆『旅のラゴス』
時をかける少女でおなじみの筒井康隆。
会社の上司から以前激推しされたため読むことに。
高度な文明を失った代わりに人々が壁抜け集団転移などの超能力を獲得した世界でひたすらに旅を続けるラゴスが主人公。
動植物や都市の名前などが全て架空のものであったり、当然のように超能力が使われ始めたりで、最初は世界観に入り込むのに少し時間がかかった。
ラゴスは一箇所で十数年過ごして王国の長になるような場面もあったが、基本的には流浪の人であり、その地で栄華を極めようとも、その地の民に残ることを懇願されても、旅をすることを止めない。
旅する一生、そしてラゴスが知恵と知識と行動によって文明を育ててきた過程の描写は壮大で物語に没入してしまう。
ラゴスの態度や言動がとても爽やかで嫌味がなく思慮深い、シンプルにカッコいい男だった。
人の本質は変化を受け入れる時の態度に現れるのではないかと思う。
過去の栄光に後ろ髪を引かれず、挫折を引きずらず、これから来る困難や成功などの清濁を合わせのもうとする覚悟を持つことが自分にはできるだろうか。
ラゴスのように軽やかに全ての変化を受け入れる、そんな人間になりたいな。