ふみと

読書の感想とか。

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最近の記事

【読書記録#30】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

超一流IT企業「スピラリンクス」の最終試験に残った大学生6人の物語。 最終試験では6人で話し合い、内定者を1人決めるという、少々酷な内容であった。 その中で発生した衝撃的な事件とは… 人間誰しも良い面と悪い面がある。 完全に善人、完全に悪人という人は存在しない、そう言い切ってもいい。 月が裏表で表面の状態が全く異なるように、1人の人間に善と悪が併存している。 そういう自分を愛せるか、そしてそういう他人を許せるか。 物語を通じて問いかけられているように感じた。

    • 【読書記録#29】廣津留真里『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』

      ハーバードとジュリアード音楽院を主席卒業した廣津留すみれさんのお母様の著書。 大分の自身の英会話教室にサマーインターンという形で毎年ハーバード生を受け入れているとのこと。そうした彼ら彼女らから得た教育的知見が書かれている。 正直、教育本を読んだことが無かったので、他との比較ができないが、記載の内容はどれも納得できるものだった。 子供には無限の可能性があるというが、最初はある程度親が導いていかなければいけないのだと思う。 こん詰めて教える、のではなく導くことが重要。 そ

      • 【読書記録#28】エリック・ジョーゲンソン『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』

        もうタイトル通り。 ナヴァル・ラヴィカントという著名投資家の思想が書かれている。 幸福は何なのかを体系化、図式化している。 幸福は ・良い人間関富+健康+富 さらにこれらの要素を分解していき、より具体的な要素を書き出している。 例えば、富は ・収入+投資収益率×資産 に分解される。 といった形で巷に溢れる量産型自己啓発本にあるような曖昧さが無い、「最強の自己啓発本」と言えるのじゃ無いだろうか。 ここに書いてあることを実践、行動に移せる人が多ければ、世はシゴデキで溢れか

        • 【読書記録#27】上田未来『人類最初の殺人』

          人類最初の種々の犯罪(殺人、詐欺、盗聴等)を描いた小説。 史実ではないのは百も承知。だが本当にこんな歴史があったかもと想像が膨らむ。 単純に読み物として面白い、サクッと読める。 絶妙に歴史で勉強した人物とかが登場するのも面白い。 卑弥呼が出てくる「人類最初の密室殺人」は緊張感もあり、かつ勧善懲悪的な日本人が好きなストーリで描かれておる。この中では1番好きな物語だ。

        【読書記録#30】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

        • 【読書記録#29】廣津留真里『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』

        • 【読書記録#28】エリック・ジョーゲンソン『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』

        • 【読書記録#27】上田未来『人類最初の殺人』

          【読書記録#26】朝井リョウ『正欲』

          なんというか、とても言葉にするのが難しい。 世の中には自分の想像もできないほどマイノリティ中のマイノリティとして自身の欲求をひた隠し生きている人々がいる。 ジェンダーやダイバーシティーといった、あらゆる人々を包摂していこうという動きがあるが、本当にこの世の中はマイノリティのマイノリティを受け入れる覚悟があるのか?そういったことを問いかけられている気がする。 読んでいて決して楽しい話ではない、考えさせられることばかりだ。 フィクションを通して世に問いかける。そう言ったこと

          【読書記録#26】朝井リョウ『正欲』

          【読書記録#25】星新一『マイ国家』

          ショートショートの大家・星新一の作品。 霜降り明星のオールナイトニッポンで「一行」というコーナーがある。星新一の物語に出てきそうな前後が気になる一行をリスナーから募集するものだ。 名文、美文を書く小説家は沢山いるが、短文で星新一っぽいという雰囲気を醸し出すことができ、尚且つ世の中にその雰囲気を共有できるというのは類稀なことだなぁ、とこのコーナーを聴いていて思った。 社会に対する皮肉・風刺に溢れた文章はクスッと笑える描写もあれば、あらゆる主義主張を先鋭化させた先の未来予知に

          【読書記録#25】星新一『マイ国家』

          【読書記録#24】辻村深月『傲慢と善良』

          安直に言えば婚活ミステリ。 婚活中の男女の人間心理、自己に併存する傲慢さと善良さへ葛藤。そう言ったものが描かれている。 人間誰しも本当は自分が大好き、そんな自分のエゴを守るため、可愛い自分を守るため、少なからず嘘をついてしまう場面もあるのでは。 本作ではそんな嘘から始まった婚約者坂庭真実の失踪の謎を、そして真美の過去を西澤架が紐解いていく物語である。 婚活をしたことはないけれど、まあこんな感じなのかなとどこか表面的な読みになっている瞬間もあれば、婚活とか関係なく、「あぁ、自

          【読書記録#24】辻村深月『傲慢と善良』

          【読書記録#23】田内学『きみのお金は誰のため』

          元ゴールドマンのトレーダーによる小説。 物語を通じてお金の正体や、社会の仕組みを解説している物語となっている。 巷に投資系の本が溢れてきた、国も資産運用立国を標榜し始めた。それ自体は良い流れだと思う。 しかし運用という側面のみにフォーカスしてしまうと、何に投資をしているのか?手触り感が無いただの数字の動きに成り下がってしまう気がする。 金融というのは資金不足主体の資金需要があってこそ成立する営みだ。お金がどう使われているのかを認識することはマネーリテラシーをあげる上で大事な

          【読書記録#23】田内学『きみのお金は誰のため』

          【読書記録#22】ケン・リュウ『紙の動物園』

          中国系アメリカ人のケン・リュウの短編集。 表題の「紙の動物園」は史上初ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の3冠に輝いた作品らしい。(ヒューゴー賞しか知らなかった。) やはり紙の動物園が1番印象に残った。 SFという要素に、移民というマイノリティとしての、そしてそのマイノリティ起因の貧困層としての葛藤という人間の内面を描き出す要素が加わっている。 SF+純文学?的な感じ。 中国SFは正直読みにくいものも沢山あって、まだ心からハマりこめていない気もする。 もう少し数読

          【読書記録#22】ケン・リュウ『紙の動物園』

          【読書記録#21】筒井康隆『旅のラゴス』

          時をかける少女でおなじみの筒井康隆。 会社の上司から以前激推しされたため読むことに。 高度な文明を失った代わりに人々が壁抜け集団転移などの超能力を獲得した世界でひたすらに旅を続けるラゴスが主人公。 動植物や都市の名前などが全て架空のものであったり、当然のように超能力が使われ始めたりで、最初は世界観に入り込むのに少し時間がかかった。 ラゴスは一箇所で十数年過ごして王国の長になるような場面もあったが、基本的には流浪の人であり、その地で栄華を極めようとも、その地の民に残ること

          【読書記録#21】筒井康隆『旅のラゴス』

          【読書記録#20】外山滋比古『乱読のセレンディピティ』

          東大生京大生みんな大好きでお馴染みの外山先生の本。 読書を高尚なものだと思わず、読みが甘くても、誤読でも構わないからとりあえず沢山読め、そこから発見がある的な話。 3回前の読書記録で取り上げた「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」では、本はノイズが多くて現代社会において実用的ではない、という話が出ていた。 一方、外山さん的な思考でいくと、ノイズがあるところに発見が生まれる。発見はいつでも思いがけないところにあり、読書はその「思いがけないこと」を意図的に発生させることが期

          【読書記録#20】外山滋比古『乱読のセレンディピティ』

          【読書記録#19】町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

          日々の生活に、人間関係に、置かれた環境に生きづらさを感じ葛藤しながらも強く生きようと力強く決意した人々を描いた物語。 誰しも今までの人生において、生きづらさを感じたことはあるだろう。でもそれはなんとなく感じだもので、明確に言語化できないケースが多いんじゃないだろうか。 その「生きづらさ」を登場人物達が自覚し、克己していく姿に、いつかの自分を重ねた瞬間もあった。登場人物達ほど深刻な生きづらさでは無いにしても。 この文章には思わずハッとしてメモった。 そうなのだ。 人生与えて

          【読書記録#19】町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

          【読書記録#18】ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

          ハインラインといえば、個人的には「月は無慈悲な夜の女王」だけど、ハインライン初心者にはあの厚さは少し怯んでしまった。 本書は何故か日本で特に人気が高いらしい。 一言で言ってしまえば、タイムトラベルもの。 親友と恋人に裏切られ、自身の発明まで奪われた技術者が主人公。 主人公が未来へ行き過去に喪失したあらゆるものを取り戻す物語。 少し古めのSFを読むと毎回感じるが、なぜ4、50年前にここまで技術的な解像度が高い物語を紡ぎ出せるのかと驚嘆してしまう。 今度山崎賢人主演で実写

          【読書記録#18】ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

          【読書記録#17】三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

          少し前に話題になった本。 働いた後になかなか本に手が伸びないということはままある。 この本が売れていることで、同じような人が沢山いるのだなと少し安心した。 仕事上の文脈で本の内容・知識が役立つ場面が少なくなってきた。 現代はより即物的に「必要な知識をノイズなく」得ることが重要視されており、その観点においてノイズの多い本はネットに劣っているといえる。 そういう意味では本をそもそも読む必要があるのかという議論も出てくるし、実用的でなくなった本はそれに加えてエンタメ的側面でもその

          【読書記録#17】三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

          【読書記録#16】綾辻行人『十角館の殺人』

          間違いなく今年読んだ本で衝撃度No.1だった。 ミステリ史に輝くあの一行。 全てが覆される。 この表現は小説でしかできないと思うが、どうやって映像化したのか気になる。 この本を契機にミステリに、そしてどんでん返しにはまってしまった。 ミステリを読んだことのない人に是非オススメしたい。

          【読書記録#16】綾辻行人『十角館の殺人』

          【読書記録#15】歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

          主人公の成瀬は自称「なんでもやってやろう屋」の男。 自称の通りあらゆることにアンテナをはり、行動しまくる。 成瀬、という名前のキャラクターはどうしてこうも行動的なのか。 ※たまたま、「成瀬は天下を取りにいく」の次に読んだ 作中の事件について、想像を巡らせながら読んでいくが、ある一場面で状況が大きく転換する。というより物語を見る前提が大きく変わる。 「そんなことはない、これまでの描写で不整合な箇所があるはず」と戻って軽く読み返してみるが、見事に筋が通っている。 これぞ叙述トリ

          【読書記録#15】歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』