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#23 救命士さんは命だけでなく心も救った
私は先日、一人暮らしの家の中で倒れた。
倒れたと言っても、かろうじて意識はあったので
自分で救急車を呼んだ。一人暮らしは長いけど
こんなことは初めてだった。
激しい吐き気、下痢、腹痛に襲われて、
トイレの前の冷たい床に倒れながら
私は本当に「私、ここで死ぬんだな…」と思った。
寒くて、脱水症状で全身が痺れて、呼吸も苦しくなる。
救急隊の方が15分ほどで駆けつけてくれた。
男性3人に囲まれたのは分かったが、苦しくて
目も開けられず、どんな人かもわからなかった。
そこから病院探しが難航した。
救急隊が来てからすぐ病院に行けるわけではなくて、
状態を確認してから病院を探すことになっているようだ。
近隣はどこも満床、受け入れ先が見つからない。
時間が長く感じた。病院を探してる間に死んじゃうのかなって。いつも0時に鳴る時計のアラーム音が聞こえて、日付が変わったことを悟った。
「手を握ってください」
私は声を振り絞って言っていた。
救急隊の方もびっくりした様子だったけれど、
私の手が硬直するほど冷たくなっていたのを
察知してくれたからか両手をギュッと握ってくれた。
普段、見知らぬ男性にそんなことは絶対に言えないのに、死ぬかもしれない不安に襲われたあの時は、自然と力の限りでお願いしてた。
やっぱりあの時は正常じゃなかったんだ。
でも嬉しかった。
握ってくれた手が、大きくて、あたたかかったから。
片手だけかと思ったのに、両手をしっかり握ってくれたから。
不安な気持ちも丸ごと包み込んでもらえたような気がしたから。
お兄さんは仕事だから私のわがままを仕方なく聞いてくれたのかもしれない。
だけど私にとって、あの状況で誰かのぬくもりに触れられたことは本当に嬉しいことで、すごく救われたんだ。
一人で、辛かった。
頼れる人が、近くにいなかった。
このまま死んで、誰にも見つけてもらえないと思った。
そんな思いが静かに消えていくのを感じた。
ありがとう。あの時の、救急隊のお兄さん。
お礼を言うことくらいしかできなくてもどかしい気もするけど、去り際の「東京消防庁」とかかれた背中がすごくかっこよかった。私には、ドラマでよくあるスローモーションのように見えた。
改めて、あんな深夜に駆けつけて最後まで面倒を
見てくれた救急救命士さんたちには感謝しかない。
個人的には、男性の肌に触れることさえも
久しぶりだったから、こんなに分厚くて
大きくて、あったかいんだ…って思ったな。
そして私は入院することになった
病院が見つかって、私はそのまま入院した。
今まさに病院のベッドの中でnoteを書いている。
診断は感染性胃腸炎だった。
小学生以来かかっていなかったから数十年ぶり、
こんなに辛かったっけ…と憔悴してる。
もう、一生なりたくない。
入院して感じた日常への感謝
人のぬくもりに触れることで安心する。
救急隊のお兄さんは救急車の中でも
私が言ったらしっかり握ってくれた。
夜中に実家から2時間かけてかけつけてくれた両親、
こういうときに、そばにいてくれる人がいるってすごくありがたい。
ご飯を食べたいと思えること、食べられることは、
健康である証。素晴らしいこと。
入院して2日はご飯が食べられなかった。
食べたいとも思えなかった。
3日目の昼になると、お粥を食べられた。
その時、自分でご飯が食べられることの幸せを改めて感じた。健康であるに越したことは何もない。
かかわってくれた全ての医療従事者の方々に
感謝したい。本当にありがとうございました。
名も分からないまま終わってしまったけれど
あの時の救急隊のお兄さんたちにこの想いが
伝わりますように。